連続インタビュー「心の社会性」
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第7回
放っておけない問題への協力行動を「仕掛け」で引き出す
文学研究科行動システム科学講座  大沼進
-- 社会的ジレンマを含む問題について研究されているそうですね

大沼准教授写真 はい。社会的ジレンマとは、
(1) ある問題について協力するかしないかを自由に選べる
(2) 各人にとっては協力しないほうが得
(3)だれも協力する人がいなければ、困ったことになる
という状況のことです。「自分一人くらい協力しなくても・・・」と考えて、みんながエネルギーを大量に消費するとCO2の排出量が増える、路上に駐輪すると道が狭くなる、役員になりたがらないとPTAや町内会が成立しない。
 ゲーム理論では、人間は自分の負担と得られる便益とを比較して、最も「お得」な、つまり合理的な行動をとると考えます。もし、全員が合理的に行動したら、さきほど挙げたような問題は解決しないはず。でも、実際にはなんとなく解決することがあるのです。このような問題の解決方法をアクションリサーチという手法を使って研究しています。

-- アクションリサーチとは?
 現場を調査し、何らかの「仕掛け(アクション)」を行います。その仕掛けによって人々の行動が変化するか、問題の改善が見られるかということを調べ(リサーチ)、結果をもとにまた次の仕掛けを考える。現場に関わる人たちと一緒に積極的に働きかけるのが特徴です。
-- 実際にどんな問題が解決されましたか?
名古屋市のゴミ排出量と資源回収量の推移 10年ほど前、名古屋市では家庭からのゴミが増え続け、埋め立て処分場が不足しかけていました。1999年2月に非常事態宣言が出され、ゴミは10種類以上に分別し、リサイクルできるものは徹底的に回収するというルールができました。その後、町内会などが中心となって自主的に分別・リサイクルを行った結果、ゴミの排出量は減り、リサイクル率はアップして現在も続いています。
 私たちは名古屋ルールが導入されるより以前から、ボランティアやNPOの人たちと一緒にびんや缶のリサイクル用コンテナを設置する活動(仕掛け)をしていました。これはルール導入のときの施策に参考にされましたし、住民の負担感を減らす効果もありました。
-- 負担が増えるのに、協力してくれたのですね
 そうです。理由は二つ考えられます。一つは住民に「ゴミを分別することで得られるメリット」がきっちり認識されたこと、もう一つは新しいルールの導入に「手続き的公正感」があったことです。名古屋市は、分別の必要性について何度も住民への説明会を行い、意見を聞きました。だから住民が、上からの一方的な押しつけではなく話し合いで公正に決められた、という意識を持てたのです。監視も罰則もなしに多くの人から協力行動を引き出す方法があったということですね。
-- 仕掛けによって行動が変わる事例はほかにもありますか?
「ゲーミング」という手法で問題解決につながる「仕掛け」のヒントが得られることもある 買い物のときレジ袋をもらわなければ地球温暖化防止に貢献できる、とわかっていても、なかなか断りづらい。でも、レジで「袋を使いますか?」と声をかけられると断りやすいのでは?と考えて、現在調査を行っています。まだ途中ですが、レジでの声かけにはそれなりに効果がありそうです。また、中学生にボランティア活動をしてもらう場合、はじめに強制的に活動させると、その後の自主的な参加率は、強制的な活動をさせなかった時よりも高いという調査結果もあります。
-- どんな問題にも効く、万能な「仕掛け」はありますか?
 すべてに共通な「特効薬」はありません。有効な仕掛けは現場ごとに違います。しかし、問題に対する共通理解を持つこと、手続き的公正感を得ることは、どんな場合にも大切だと思います。   
 とにかく、放っておいては何も変わらないから何か仕掛けなければ! もっとも、一つの仕掛けですべてがうまく行くわけではなく、新しい問題が出てきてへこむこともあります。でも問題が解決に向かっていったとき、理論を超えた人間の心の動きに感動できるのがこの研究の醍醐味です。世の中に問題はたくさんありすぎて、当分テーマ探しに困ることはなさそうですね。
メモ
文学研究科行動システム科学講座 大沼ゼミ
学部生:3年生4名、4年生2名、大学院生:修士課程1名
他己紹介
 実は、大沼先生の研究については、教室にいっぱい人を集めて何かやっているのを見たことはありますが、環境に関することをやっているらしい、位のことしか知りませんでした。
 聞くところによると、多くの学生と町に出て精力的に研究を進めておられるとのこと。実験室にこもって細かいことをチマチマやっている僕とは対照的ですね。これを機にじっくりと研究のお話をしてみたいと思います。
(教育学研究院 片山 順一)
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