ERP(事象関連電位)という「ものさし」を使います。頭皮に電極を2つ貼り付け、電極間の電位(電圧)差の変化を記録すると波のように見えます。この波が脳波です。脳のいろいろな活動の総和を反映するものなので、生きている間中ずっと出ています。これに対して、光や音などの刺激に対する脳の特定の反応を取り出したものがERPです。 ERPは脳波に比べると非常に小さいので、加算平均という手法で取り出します。このERPを「ものさし」として使えば、外見からは観察できず、しかも一瞬にして起こる脳の活動や反応をミリ秒(1000分の1秒)単位で知ることができます。意識に上らない反応も拾い上げることができるので、注意の研究にとても有用です。このほかにもうちの院生諸君は、ERPを使って、エラーをしたときに脳内で起こる反応や、視覚イメージをつくるときの脳の活動を研究しています。
近頃は脳科学ブームで、脳の「どこが」活動しているかを色分けしている画像がテレビなどによく登場するようになりましたが、ERPは「いつ」何が起こっているかという時間的な情報を与えてくれます。僕は世の中にこんなにおもしろい「ものさし」は他にないと思っています。基礎研究だけでなく、臨床や人間工学の分野にも使われていますが、今後さらに応用分野が広がることを期待しています。 |