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先生のご研究テーマを教えてください |
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私は、日米を中心とした文化比較研究をしてきました。人間の行動のパターンや考え方、同じ実験に対する反応などは国や地域ごとに違います。それを比較すること自体がおもしろいのですが、その中で、誰も気づかないような文化の違いを明らかにしてやろう、また その違いはどこから生まれるのかをつきとめてやろうと考えています。 |
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文化比較のおもしろさはどんなところにあるのですか? |
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まず、社会が異なると人々の考え方や行動がこんなにも違うのかということにしばしば驚かされます。そこで、そうした文化の違いをもたらす社会的要因が何なのか明らかになれば、「社会的動物」としての人間の本質についての「法則性」がわかります。文化比較は、その法則を明らかにするきっかけになると思います。 |
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日本人は集団主義で、アメリカ人は個人主義だといわれます |
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そうですね。一般に、日本人は自分が他人との対人関係の中にあって初めて意味をもつと考え、自分の所属する集団を大事にするといわれます。一方アメリカ人は個人の目標達成や独自性を大事にし、物事を主体的にコントロールすることをめざすといわれてきました。
ところが、個人主義であるはずのアメリカ人にも実は集団主義的なところがあるんです。たとえば彼らは自分の出身大学や州のロゴが大きくプリントされたTシャツを好んで着たり、フットボールやオリンピックなどの対抗戦を熱心に応援したりします。同じ集団の仲間たちと、「自分たちの集団は他の集団とは違うんだ、優れているんだ」という気持ちを共有していると考えられます。 |
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日本人の集団主義とは違うのですか? |
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質的に違います。日本人は集団を人間関係のネットワークが集まったものととらえ、どちらかといえば集団の「内側」のできごとに注意を払います。その集団にはどんなメンバーがいて、どういう人間関係があり、自分はどの位置にいるか、というようなことです。そして日本人は集団を穏やかに安定した状態で維持することを大切にします。「和を尊ぶ」集団主義ですね。それに対してアメリカ人の「北米型集団主義」は、自分の目標達成のために有利な集団を選び、そこに一体化するという考え方です。さらに自分が所属する集団は目標や価値観が同じメンバーの集合で、他の集団とは違う何かを持っていると考える。「共有感覚」と「他集団との比較」をもつ集団主義です。 |
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このような違いはどこから生まれるのでしょうか? |
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社会の「関係流動性」、つまり対人関係や集団を選択するときの自由度の違いから来るのではないかと考えています。日本人の社会は関係流動性の低い社会です。所属する集団を頻繁に変えることはないので、その内部でうまくやっていくために遠慮しあったり自分の感情をストレートに出さずに抑えたりすることが必要になります。しかしアメリカ人の社会は転職の多さに表れているように、所属する集団の組み替えが簡単に行われる関係流動性の高い社会です。だから、自分の目標達成のためにより優れている集団を探し、そのメンバーと一体化することを望むのだと思います。 |
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日本人とアメリカ人とでは、感情をよむときの着眼点も違うそうですね |
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日本人は集団内の調和を大事にするので、本当の気持ちが顔に表れないよう気をつけます。しかし解剖学的にみると、口元の筋肉は意志でコントロールできますが、目元の筋肉はそれができません。「笑顔だけど目は笑っていない」などといいますよね。だから、相手の本当の気持ちが知りたいとき、日本人は目を見て判断するのです。一方、本心を正直に顔に表すことが奨励される社会に住むアメリカ人は、相手の口元で感情を判断します。口角を上げて笑っているかどうか、目元よりも大きく動く口に着目していると考えられます。この違いは、電子メールの「顔文字」にも表れています。日本の顔文字は主に目の部分で笑い、涙、驚きなどを表すのに対し、アメリカの顔文字は主に口で感情を表しています。 |
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おもしろいですね! |
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集団主義にも顔文字にも共通するのは、社会のしくみやあり方が、人間の心や行動を形成しているということです。つまり「こういう社会だからこういう生き方が必要になるんだよね」ということ。社会が人間の心に影響を与える、その与え方の普遍的な法則をつきとめたいですね。 |
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メモ |
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他己紹介 |
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結城先生が学生の人気ナンバーワンなのは、甘いマスクと魅惑の微笑みのせいだけではありません。常にトップクラスを維持している授業評価の高さは、文化と社会をつなぐ「ほんとうの」社会心理学をめざす結城先生の研究の魅力と、その魅力を学生に伝えるコミュニケーション力の反映ですね。
(文学部行動システム科学講座 山岸俊男) |
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