Seminar

論文紹介・研究相談会(谷藤)

Mu-opioid receptor (OPRM1) variation, oxytocin levels andmaternal attachment in free-ranging rhesus macaques
(放し飼いのアカゲザルにおけるμオピオイド受容体(OPRM1)とオキシトシンレベル、母性的愛着の関連)
James P. Higham, Christina S. Barr, Christy L. Hoffman , Tara M. Mandalaywala,Karen J. Parker, and Dario Maestripieri,
Behav Neurosci. 2011 April ; 125(2): 131–136

母子の絆の遺伝子的・神経内分泌的基盤を理解することは哺乳類の親密さや愛着を理解するのに重要である。機能的に類似した非同義のμオピオイド受容体(OPRM1)の一塩基多型は、ヒト(A118G)やアカゲザル(C77G)で発現し、保持されてきた。アカゲザルでは、OPRM1の違いは子供の母親に対する愛着の個体差を予測する。具体的には、対立遺伝子Gを持つ子供は対立遺伝子Cのホモ接合型を持つ子供よりも、母親から引き離される際に強い苦痛を感じ、再会時により長い時間を母親と過ごす。ヒトでは、対立遺伝子Gを持つヒトは社会的パートナーから傷つけられたときに受ける精神的苦痛をより強く感じる。我々はプエルトリコのカヨ・サンティアゴの放し飼いになっているメスのアカゲザルの集団について一年の間ずっと母性行動を研究した。メス個体を捕まえ、その血液サンプルを採取し、そこからOPRM1の遺伝子型を判定した。同様にCSFサンプルも採取しオキシトシン(OT)レベルについても測定した。その結果、対立遺伝子Gを持つメスは対立遺伝子Cのホモ接合型を持つメスよりも子供の移動を制限する(子供の背中を引っ張って自分から離れるのを防ぐ)ことがわかった。対立遺伝子Gを持つメスは対立遺伝子Cのホモ接合型をもつメスよりも授乳中に高いオキシトシンレベルを示し、妊娠中も授乳中もそのオキシトシンレベルは低くならない。本研究はOPRM1の遺伝子型と子に対する母の愛着の関連を示す初めての研究である。(谷藤)

開講日 | 2017年06月28日 14:45-16:30 場所 | E304