Seminar

後期ゼミ8回目 論文紹介(山田・中分)

論文紹介(山田・中分)

Enhanced partner preference in a promiscuous species by manipulating the expression of a single gene.
Lim, M., Wang, Z., Olazábal、D. E., Ren, X., Terwilliger, E. F., and Young, L. J. (2004).
Nature, 429, 754-757.

一夫一婦制(特定の相手とつがいを形成する)と乱婚制(つがいを形成しない)の種の違いを生み出す神経基盤を検討した論文で、実験的に脳内の神経伝達物質を操作することにより、何がpair-bondingを調整するのかを検討した論文です。(山田)

Restorative Justice in Children
(子供における修復的正義(修復的司法))
Riedl, K., Jensen, K., Call, J., & Tomasello, M. (2015).
Current Biology, 25(13), 1731-1735.

ヒトにおいてフリーラーダー問題に対処し協力を維持する上で重要かつ人特有であると考えらえているのが第三者罰である。チンパンジーにおいて二者関係において罰を行う個体であっても、第三者罰はみられない。(ヒトの)子供は規範の逸脱に対して罰を与える。他者に対して手助けをするような人形に対して危害を与えるような人形よりも資源を共有しやすく、また被害者よりも加害者の人形を注視する選好がある。子供は6歳で架空および実在する同年代の子供(peers)に対してコスト支払い罰を与え、罰への脅威によって就学前時はより寛容に振る舞うことが知られている。しかしながら、子供の正義がどのような動機持つのかはあまり知られていない。著者らは、3歳児・5歳児に二者関係および三者関係において搾取によって手に入れた品を(その人物の前から)取り除く機会(実験1)、元の持ち主へと返還(修復)する機会(実験2)を与えた。子供は2者間と同じように、3者関係においても介入するが、被害者がどのような原因によって被害に関してはあまり区別していなかった。3歳児に除去・修復の二つを選択させた場合、修復をより多く選択した。この結果は、被害者に対して中心的にあらわれる正義感は、幼少期から出現し、人間の協調における第三者介入を際立たせるものである。(中分)

(超要約)チンパンジーは第三者に対して罰を行わないことが知ら得ている。本研究の結果、人間は3歳児の時点ですでに第三者に対して介入を行う。また、不正によって得られた利益を取り上げるのではなく(=罰)、もとの持ち主に返す方をこのむ(=修復)

開講日 | 2015年12月01日 4・5限 場所 | E304