後期ゼミ7回目 論文紹介(馬場・野村・瀧本)
論文紹介(馬場さん先週の続き・野村・瀧本)
Contrafreeloading and the value of control over visual stimuli in Japan macaques (Macaca fuscata)
(ニホンザルにおけるコントラフリーローディングと視覚刺激を支配する価値)
Ogura T. (2011)
Animal Cognition,14,427-431
コントラフリーローディングは、自由に得られる全く同じ餌がある場合でさえ、餌のために働くことを選ぶ行動のことを表すが、これは動物の採餌行動に見られる。この現象は“information primacy model(情報優越モデル)”で説明さえうる。動物にとって食べ物それ自体だけではなくその供給源の情報にも価値があるからということである。本研究では、ニホンザルにおいて、報酬を食べ物ではなく動画を用いた場合のコントラフリーローディング様の現象を立証し、またコントラフリーローディングの裏に存在するモチベーションシステムについて調査した。実験では、課題の結果によって得られる動画(earned movie)と自動的に与えられる動画(free movie)が同時に提示された。サルたちは同じ動画が得られるにも関わらず、動画を獲得するために課題への反応を続けた。この結果は、動画が報酬でもコントラフリーローディングが起こるなによりの証拠となる。コントラフリーローディングで残っている動画へのモチベーションは“competence theory”に従って、環境をコントロールするものとなりうる。(野村)
The evolutionary origin of human hyper-cooperation.
(ヒトの卓越した協力の進化的起源)
Burkart, J.M., Allon, O., Amici, F., Fichtel, C., Finkenwirth, C., Heschl, A., Huber, J., Isler, K., Kosonen, Z.K., Martins, E., Meulman, E.J., Richiger, R., Rueth, K., Spillmann, B., Wiesendager, S., & van Schaik, C.P. (2014).
Nature Communications, 5, 4747.
自発的な向社会性はわれわれヒトの卓越した協力(hyper-cooperation)の重要な要素である。同様に、その自発的な向社会性は、複雑な認知や道徳性・累積的文化や技術といった様々なヒトの特性を生み出すことをも可能にしてきたといってもよいだろう。しかしながら、ヒトの向社会的感情の進化的基盤はまだあまりわかっていない。というのも、これまでの研究は主に霊長類を対象に行われてきたのだが、その多くが結果を直接比較比較できない(バラバラの)実験パラダイムを用いており、様々な機能的仮説を検証する実験としては適切ではなかったからだ。そこで、われわれは15種24グループの霊長類種を対象に標準化された向社会性実験を実施し、ここにその結果を示す。母親以外の個体が子供を世話する(allomaternal care)程度の高さが自発的な向社会性における種間の多様性を最も良く予測した。それゆえ、自発的な向社会的動機づけは協力的な養育の進化が有利に働くよう淘汰がかかった場合に体系的に生じると考えられる。ヒトのデータもこの一般的な霊長類のパターンに一致するので、われわれヒト亜科の祖先が協力的な養育をするようになったという事実もまた、ヒトの卓越した協力の起源がallomaternal careに起因するという今回の実験結果の妥当性を強めている。(瀧本)
開講日 | 2015年11月24日 4・5限 場所 | E304