後期ゼミ6回目 論文紹介(佐藤・馬場)
14:45~17:00 論文紹介(佐藤・馬場)
Familiarity Bias and Physiological Responses in Contagious Yawning by Dogs Support Link to Empathy
(イヌのあくびの伝染における親密性バイアスと生理的反応はあくびの伝染と共感の関連性を支持する)
Romero, T., Konno, A., & Hasegawa T. (2013)
Plos ONE, 8, e71365
ヒトでは、あくびの伝染しやすさは、理論的・実証的に私たちの共感能力に関連していると言われてきた。その関連について進化生物学の視点から考えるために、この現象は、最近のヒト以外の種における研究の注目のテーマとなってきている。共感仮説に一致して、あくびの伝染は、いくつかの霊長類種において社会的愛着(親密さ)の程度と相関することが示されている。イヌ(Canis familiaris)もあくびが伝染する能力を示している。しかし、今のところ、イヌのあくびの伝染における社会的調節に関する研究は、結果が一貫していなかったり、結果がポジティブであったとしても(あくびの伝染が生じる理由として共感が生じたからという説明とは)別の説明が可能であることもある状況だ(共感ではなく、単なるストレス反応としてのあくびだろう等)。それはポジティブな証拠を説明することができる。本研究は、イヌのあくびの伝染を追試し、介在する可能性のある2つのメカニズム(共感VSストレス反応)を区別することを目指している。25匹の犬が知っている人(犬の飼い主)と見知らぬ人(実験者)があくびと統制された口の動きを演じるのを観察した。さらに21個体の被験体で同時に生理指標(心拍数)が測定された。あくびの伝染は統制された口の動き条件でよりもあくび条件で有意に多く生じた。さらに、イヌは見知らぬモデルよりも知っているモデルを見ているときにより頻繁にあくびをした。イヌにおけるあくびの伝染性は感情的な近接性の程度と相関した。また、被験体の心拍数は条件間では差がなかった。この結果は、イヌのあくびの伝染現象はストレスの多い出来事とは無関係であることを示唆している。我々の研究結果はあくび伝染が行動の感情構成によって調節され、共感の基本的な形はイヌに存在し得ることを示すことができるという見解と一致している。(佐藤)
Do dogs ( Canis familiaris) seek help in an emergency?
(イヌは緊急事態のときに助けを探し求めるか?)
Macpherson,K.&Roberts,W.A.(2006)
Journal of Comparative Psychology, 120, 113-119
イヌが緊急事態を認識し、傍観者からの助けを探し求める必要性を理解するのかどうかという疑問が2つの実験で試された。最初の実験では、イヌの飼い主が開けた野原で心臓発作になったふりをし、二つ目の実験ではイヌの飼い主が本棚が倒れてきて彼らを床に押し付けるという事故を体験した。これらの実験では、イヌが助けを求めに行ける傍観者が一人か二人いた。イヌの行動は、飼い主が倒れてから6分間録画されのちにイヌが変わった行動する頻度と、それに費やした時間が記録された。イヌが傍観者に助けを求める実例はなかった。イヌは緊急事態の性質や助けを得る必要性を理解していないと結論づけられる。(馬場)
開講日 | 2015年11月17日 4・5限 場所 | E304