Seminar

論文紹介(小野・戸松)

自主ゼミ4回目では、学部4年の小野さんと戸松くんが論文紹介をしました。

Secondary emotions in non-primate species? Behavioural reports and subjective claims by animal owners

「霊長類以外の動物に二次的情動は存在するか?飼い主による行動報告及び主観的主張」

Morris, P. H., Doe, C., & Godsell, E. (2008) Cognition and Emotion, 22(1), 3-20. 

DOI: https://doi.org/10.1080/02699930701273716

 

一次的情動の明確な特徴は、多種多様な種において発生することである。二次的情動はヒトや他の霊長類に限定されていると考えられている。本研究では、非霊長類種における一次的及び二次的情動の主張を調査した2つの研究から得た証拠を報告する。研究1:907名の飼い主が飼っている動物において観察した情動を調べた。参加者は、二次的情動よりも一時的情動を頻繁に。自己意識的評価情動よりも自己意識情動を頻繁に報告した。嫉妬は非常に高い水準で報告され(イヌの81%、ウマの79%)、嫉妬が二次的情動として一般的に定義されていることを踏まえると、これは驚くべきことであった。研究2:40匹のイヌの飼い主に、動物が嫉妬していると主張する状況と行動についてインタビューを受けた。嫉妬の行動の記述には一貫性があった。そのような報告は、Buck(1999)などの理論家が予測したように、非霊長類種における二次的情動の存在の証拠を提供する。(小野)

 

Mother–infant interactions in free-ranging rhesus macaques: Relationships between physiological and behavioral variables  

「放し飼いのアカゲザルにおける母親と乳児の相互作用:生理指標と行動の関連」

  Maestripieria, D., Hoffmana, C. L., Andersonb, G. M., Sue Carterc ,C., and Higleyd, J. D.  (2009). Physiology and Behavior, 96, 613–619. doi:10.1016/j.physbeh.2008.12.016 

ヒト以外の霊長類における母親と幼児の関係の研究は、母親の育児のスタイルの個人差の神経分泌学的な基盤と、様々な母親の育児スタイルに早期からさらされることが育児の行動の発達に対して与える影響のメカニズムを理解しようと試みてきた。この研究では、プエルトリコのカヨサンディエゴ島に生息する放し飼いのアカゲザルを対象とし、3つの目的で調査を行った、1.授乳が血中コルチゾール・プロトラクチン・オキシトシンレベルおよびセロトニン・ドーパミン代謝産物(5-HIAA, HHA)のCSF(脳脊髄液)レベルの変化と関連しているかを、授乳中と授乳中ではないメスの個体を調査した、2.母親の生理機能の個体間でのバリエーションと、母親の行動の関連の度合いを調査した、3.乳児の生理機能と行動のバリエーションが、母親の生理機能と行動のバリエーションとの関連の度合いを調査した。その結果、授乳中のメスの個体は、授乳中ではないメスの個体に比べコルチゾール・プロトラクチン・オキシトシンの血中濃度が高かったが、HVAのCSF中濃度が低かった。また、母親の拒否行動のバリエーションは、母親の血中コルチゾールレベルおよび5-HIAAのCSF中レベルと正の相関があり、授乳とグルーミングに費やされた時間のバリエーションは母親の血中オキシトシンレベルと関連していた。そして、母親によって保護されていた乳児は、保護されてなかった乳児よりも血中コルチゾールレベルが高くなったが、拒否反応が多い乳児は拒否反応が少ない乳児よりも5-HIAAのCSF中レベルが低くなった。高レベルの母親の保護行動と拒絶行動にさらされることは、のちの子供の行動と環境への反応に影響を与えることが知られているので、この結果は、これらの影響が子供のHPA軸と脳のセロトニン系の活動の長期的な変化によって媒介されるという仮説と一致する。(戸松)

開講日 | 2020年06月29日