Seminar

論文紹介(明日香・吉岡)

4年生の明日香さんと3年生の吉岡くんが論文紹介をしてくれました。

Cats match voice and face: cross-modal representation of humans in cats (Felis catus). 
「ネコ(Felis catus)は人間の音声と顔のクロスモーダル表現を理解することができる」 
Takagi, S., Arahori, M., Chijiiwa, H., Saito, A., Kuroshima, H., & Fujita, K. (2019). Animal Cognition, 1-6.
DOI: https://doi.org/10.1007/s10071-019-01265-2

 本研究では、イヌのクロスモーダル期待違反パラダイム(Adachi et al., 2007)を利用して、ネコが 人間のクロスモーダル表現を理解することができるかどうかを調べた。私たちは出生後の経験によ る潜在的な影響を評価するために、家庭とネコカフェに住んでいるネコを比較した。 飼い主又は見 知らぬ人が参加個体の名前を呼んでいる音声を再生した後、飼い主又は見知らぬ人のどちらかの 顔がパソコンのモニターに表示された。半分の試行では、声と顔は同一人物であった(一致条件) が、他の半分では顔と声は一致しなかった(不一致条件)。ネコカフェのネコは、一致条件よりも不 一致条件でモニター注視行動が長かった。これは、期待違反があることを示している。一方で、家 庭のネコにはそのような傾向が見られなかった。これらの結果は、少なくともネコカフェのネコは、飼 い主の音声を聴いて飼い主の顔を予測できることを示しており、少なくとも一人の人間に関しては クロスモーダル表現を持っていることを示唆している。最小限の種類または量の出生後の経験が特定の人間のクロスモーダル表現の理解に寄与しているのかもしれない。(明日香)

Neonatal face-to-face interactions promote later social behaviour in infant rhesus monkeys. 
「新生児期の対面でのやりとりはアカゲザルの子どものその後の社会行動を促進する」
Dettmer, A. M., Kaburu, S. S., Simpson, E. A., Paukner, A., Sclafani, V., Byers, K. L., Murphy, A. M., Miller, M., Marquez, N., Miller, G. M., Suomi, S. J., & Ferrari, P. F. (2016). Nature Communications, 7, 11940.
DOI: https://doi.org/10.1038/ncomms11940

 ヒトを含む霊長類では、その頻度の差は種内・種間であるものの、母親がその子どもと対面してやりとりをする。しかしながら、その対面でのやりとりにおける個体差が子どもの社会性の発達に与える影響についてはよくわかっていない。そこで、私たちは、アカゲザル(Macaca Mulatta)では、新生児期により多く母親との対面したやりとりをした子どもほど2-5ヶ月時に社会的やりとりを多く行うということを報告する。さらに、私たちは、統制された実験によって、この効果が身体接触によるものではないということも示す。無作為に割り振られた2群について、新生児期にヒトの世話係と対面したやりとり(相互注視や断続的なリップスマッキング)が追加された群のサルは、ハンドリング(手で触れること)だけを追加された群のサルに比べて、2ヶ月時に社会的興味をより強く見せたのである。これらの結果は、出生時からの対面したやり
とりが霊長類の幼い個体において社会的興味や社会的能力を促進することを示唆している。(吉岡)

 

開講日 | 2019年07月17日 14:45~18:00 場所 | E304