Seminar

論文紹介(上田・高倉)

Both Nearest Neighbors and Long-term Affiliates Predict Individual Locations During Collective Movement in Wild Baboons
「近くにいる仲間と長期的な関係の両方が野生のヒヒの集団行動中の個体の位置を予測する」
Farine, D. R., Strandburg-Peshkin, A., Berger-Wolf, T., Ziebart, B., Brugere, I., Li, J., & Crofoot, M. C. (2016) Scientific Reports, 6: 27704.
https://doi.org/10.1038/srep27704

多くの動物社会において、個体の集団ははっきりと線引きされた優勢順位と多様な親和的関係によって形作られた安定した社会的構成単位を形成する。社会的に複雑な集団はどのように結束を維持し、集団行動を実現しているのだろうか?本研究では、野生のヒヒの群れのメンバーを高解像度のGPSで追跡することによって、安定した社会集団の集団行動が近くの仲間とのやりとり(一般的に匿名性の高い関係をもつ群れにみられる)や社会関係、あるいは個体が全体的な集団構成に注意を払うことによって、統制されているかどうかを調べた。行動を予測する候補モデルを構築し、そのモデルが焦点を当てた個体の未来の軌道の予測力を評価した。その結果、近くにいる4~6個体の仲間が、ヒヒの移動をもっともよく予測していた。その仲間は、通常個体にとって最も近くにいた仲間であったが、ヒヒは特定の仲間に対して明確な好みを持っており、社会関係がより長い時間尺度で個体の位置を予測することがわかった。これらの結果は、集団での出発行動といったような、霊長類における集団の効果を促進するうえでの位置ルールの重要性を強調する既存の理論研究や実証研究を支持している。本研究は、’移動している’ヒヒの結束を維持するルールと、遊びの際の社会的インタラクションの異なる時間的尺度を明らかにすることによって先行研究を拡張する。(上田)

Animals Remenber Previous Facial Expressions that Specific Humans Have Exhibited
「動物は特定の人間が表出した以前の表情を覚えている」
Proops, L., Grounds, K., Smith, A.V., & McComb, K. (2018) Curent biology, 28, 1428-1432.
https://doi.org/10.1016/j.cub.2018.03.035

人間にとって、表情は重要な社会的信号であり、特定の個人をどのように知覚するかは、過去に遭遇した時に抱いた微妙な感情的な手がかりの影響を受ける可能性がある。 広範な動物種は、表情によって他者の感情を識別することも可能であり[1-5]、特定の個人との感情的な経験を思い出すことは、これらの個人と再び遭遇したときに、社会的な結び付きと攻撃の回避に明確な利益をもたらすことができることは明らかだ。ヒト以外の動物が直接的に害を与えた個人の身元を覚えることができるという証拠があるが、動物が彼らの顔に示す微妙な感情表現を観察するだけで、特定の個体の永続的な記憶を形成できるかどうかは知られていない。ここでは、我々は統制された実験を行い、調教された馬は人間の怒っているまたは幸せな顔の写真を提示され、数時間後にその人間のニュートラル状態の表情を見た。 表情の短期間の提示は、過去の怒っている表情がネガティブに認識され、幸福な表情がポジティブに認識されることと一致して、その個人へのその後の反応において(しかし、異なる不適合の組み合わせの人にではなく)明確な相違を生じさせるのに十分であった。両方の人間は、馬が見た写真を見せされていなかった。私たちの結果は、ヒト以外のいくつかの動物が、特定の個人との将来の相互作用を導くために記憶を使用して、その瞬間その瞬間で現れる人の感情状態の手がかりを効果的に傍受することができるという明確な証拠を提供する。(高倉)

開講日 | 2018年07月04日 14:45~18:00 場所 | E304