論文紹介(ワイルズ・鎌谷)
Chimps of a feather sit together: chimpanzee friendships are based on homophily in personality
「似た者どうしは一緒に座る:チンパンジーの友好関係はパーソナリティの同類性に基づく」
Massen, J. J. M, & Koski, S. E. (2014) Evolution and Human Behavior, 35, 1-8.
https://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2013.08.008
近年のいくつかの研究は、ヒトを含む動物の友好関係は持続的で、自らの生存率だけでなく、子の生存率や繁殖成功率も高まるなど、適応的利点があることを示してきた。しかし、特に非血縁個体間において、何が友好関係を決定するのかははっきりしていない。ヒトの非血縁個体間の友好関係は、ある程度はパーソナリティの類似性によって決まっている。我々は、飼育下の38個体のチンパンジーの友好関係におけるパーソナリティの類似性について調べた。被験者内比較により、友だち同士は友だちではない同士よりも、社交性(sociability)と大胆さ(boldness)において高い類似性をもつことが明らかになった。続いて行われた血縁ペアと非血縁ペアを含んだ分析では、接触しながら座った(contact-sitting)非血縁ペアにおいてのみ、大胆さと毛づくろい均衡(grooming equity)の正の影響がみられた一方、社交性については、接触しながら座ったペア全てにおいて高い類似性をあったことが分かった。これらの結果は、ヒトと同じように、チンパンジーの友好関係は、パーソナリティのある特性の同類性、特に社会的にポジティブで協力的な行動につながる同類性に関係していることを示している。自分と似たパーソナリティをもつ個体と友だちになることは、(特に協力する状況において)信頼性を高めることによって、相互作用における不確実性を減少させ、故に適応的なのではないか。さらに言えば、ヒトの友好関係における同類性は、少なくともチンパンジーとの共通祖先まで遡ることになるのではないか。(ワイルズ)
Third-party interventions keep social partners from exchanging affiliative interactions with others.
「社会的なパートナーが、他個体と親和的なやりとりを交換することをさせない、第三個体の介入」
Schneider, G., & Krueger, K. (2012) Animal behaviour, 83(2), 377-387.
https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2011.11.007
第三者による介入は、第三者の直接的な割り込みや威嚇といった身体的接触による、二個体のやりとりを邪魔するものとして定義される。先行研究では敵意的なできごとに対する介入に焦点を当てられてきていた。しかし、親和的な行動に対する介入、特に介入している動物の社会的な関係とその社会的・空間的な位置と関連については検討されていない。ウマ(Equus caballus)は、介入が敵意的なやりとりに対してよりも、親和的なやりとりに対して生じる頻度が多いという、興味深いモデル種の一つである。本研究では64頭の野生のウマが、67回の親和的やりとりと8回の敵対的なやりとりへの介入を観察期間中に示した。親和的なできごとにおける介入を分析し、安定したハレム群における、群れの仲間への親和的なやりとりにおける介入は、おもに高順位のメス個体によるものであった。介入する個体は、群内における、親和的・敵対的なできごとに積極的に関与していたが、特定の社会的役割や空間的位置を占有することはなかった。介入個体は、群れの他のメンバーとやりとりをしている、(介入個体と)社会的な絆を持つ群れの仲間との、親和的なやりとりに介入した。また、絆を持たない動物を標的とし、自分と社会的絆を持っている個体に近づいた。いくつかの種は、親和的なやりとりにおける第三個体への介入を、好まれる社会的やりとりのパートナーの競争が、よりコストな敵対的なできごとにエスカレートするのを防ぐために、使用することを示唆した。(鎌谷)
開講日 | 2018年06月27日 14:45~18:00 場所 | E304