論文紹介(明日香)・卒論研究相談(富所)
1. 論文紹介(明日香)
Investigating empathy-like responding to conspecifics’ distress in pet dogs.
「ペットイヌにおける同種他個体の苦痛への共感的反応の検討」
Quervel-Chaumette, M., Faerber, V., Faragó, T., Marshall-Pescini, S., & Range, F. (2016) PLoS ONE, 11(4):e0152920. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0152920
他者の感情状態を共有する情動伝染から、動物が他個体の状況を把握し、心配するような行動を見せる同情的な気遣いに至るまで、共感は、認知的な複雑さの含む度合いによって変化する広範囲にわたる現象を含んでいる。多くの研究で動物が同種の苦痛に対してどのように反応するか調べられてきた一方、イヌはこれまで主に異種個体に対する共感的反応を検討することが目的とされてきた。本研究では、イヌが共感的な行動を同種に対してもとるかを検討するために、苦痛な出来事の最中に録音された同種の音声(鳴き声)ならびに統制音を用いるプレイバック法を採用した。参加個体のイヌは、最初に、統制音・聞きなれた鳴き声(親密なパートナー個体から発せられた)・聞きなれない鳴き声(見知らぬイヌから発せられた)のいずれかの刺激が再生されるプレイバックフェイズを行い、その後、親密なパートナー個体が部屋に入ってくる再会フェイズをおこなった。参加個体のイヌは、鳴き声を再生されたとき、音響的に類似している統制音を再生されたときよりも高い行動的覚醒を示し、よりストレスに関連した行動をみせた。また、統制音を再生された後よりも、鳴き声を再生された後の方が、親密なパートナー個体に対してより慰め行動を取った。さらに、最初のセッションを見ると、見知らぬイヌの鳴き声を再生されたときよりも、親密な個体の鳴き声を再生されたときに、慰め行動はパートナー個体に対しての慰め行動が多く見られた。さらに、親密な個体の鳴き声を再生されたときに、より高いコルチゾール濃度を維持する傾向がある一方、見知らぬイヌの鳴き声を再生されたときではそうならなかった。著者らの知る限り、これらの結果は、イヌが同種の苦痛音声に対して 「共感的な」反応を経験でき、実際に行動に移せることを初めて示唆する。(明日香)
2. 卒論研究相談(富所)
開講日 | 2018年06月20日 14:45~18:00 場所 | E304