Seminar

論文紹介(山縣・明日香)

Coding of modified body schema during tool use by macaque postcentral neurones
「マカクザルの中心後回のニューロンによる,道具使用中に調整された身体スキーマのコーディング」
Lriki, A., Tanaka, M., & Iwamura, Y. (1996). NeuroReport, 7(14), 2325–2330.
DOI: 10.1097/00001756-199610020-00010

身体的感覚および知覚的感覚の両方において,道具は手の延長である。身体スキーマの存在は、道具と手の知覚的同化の基礎と想定されてきた。我々は、熊手を使って離れた物体をとる訓練をマカクザルに行ない、体性感覚と視覚の信号が集約される領域である中心後回尾側部における神経活動を記録した。そこで我々は、 手のスキーマをコードするような、多数のバイモーダルニューロンを発見した。道具使用中、それらの視覚受容野は、熊手の全長を含むように、あるいは拡張された”手の届く”範囲を覆うように変容した。これらの知見は、道具が組み込まれるように調整された手のスキーマと関連する神経的な基盤を表しているのかもしれない。(山縣)

Man’s other best friend: domestic cats (F. silvestris catus) and their discrimination of human emotion cues.
「人間のもうひとりの親友であるネコと、彼らによる人間の感情刺激の識別」
Galvan, M., &,Vonk, J. (2016). Animal Cognition, 19, 193–205
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10071-015-0927-4

人間の感情表現に従い、注意を向けるペットイヌ(C. lupus famaliaris)の能力は十分に証明されている。しかし、ペットネコ(F. silvestris catus)が同様の能力を有するかどうかは不明である。ネコは同じ肉食哺乳類(Carnivora)に属しているが、複雑な社会集団に属するように進化していないため、それらを用いた研究は、感情などのような人間のコミュニケーション刺激を認識する能力に、社会構造と飼育過程の影響を区別することができる。ペットネコが人間の感情刺激を識別する程度を確かめるために2つの実験が行われた。最初の実験では、音声刺激がない場合、馴染みのない実験者と親しみのある飼い主の両方から、幸せと怒りの表情と姿勢を参加個体に提示した。二つ目の実験では、実験者と飼い主との間のポジティブまたはネガティブな会話を通して、人間の感情の音声刺激を参加個体に提示した。ペットネコは人間の感情に対してあまり敏感に反応せず、人間との相互作用の歴史だけではペットネコの能力を形成するには不十分であることを示唆している。(明日香)

開講日 | 2018年07月11日 14:45~18:00 場所 | E304