Seminar

後期ゼミ2回目 論文紹介(野村・馬場)

論文紹介(野村・馬場)

Rhesus monkeys know when they remember.
(アカゲザルは自分が覚えているときを知っている)
Hampton, R. R. (2001).
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 98, 5359-5362.

人間は、意識的に一部の記憶について理解しており、言葉にすることができる。だが、残りの記憶についてはたとえ行動に影響が表れていたとしても、意識することができない。この記憶へのアクセス方法の顕著な違いは、人間の記憶システムの分類の際中心となるが、動物を対象とした研究では、文字にして証明することは難しい。このことは、いくつかの記憶の形態は人間に独特なものかもしれないということを示している。ここで私は、アカゲザルが、記憶が存在するかしないかどうかを伝えることができるということを示す。主観的で意識的な記憶を確証することは、言葉を使用しない動物の意識の特性上、ほとんど不可能であるが、この結果は客観的に、人間の意識的な記憶と重要な機能が相似していることを示す。もし動物が忘れてしまった時に、記憶テストを回避することが許されていたならば、記憶が存在するかしないかを見分けることのできる動物は、正答率が上がるだろう。そして、実験的に記憶を衰えさせた時、テストの回避を多くやるはずである。調査された2頭のサルのうち、1頭は全てのテストの条件の基準に当てはまったが、もう1頭は1つのケースを除き、当てはまった。プローブ実験では、環境刺激や行動刺激などの広く様々な「手がかり」を排除した。記憶がないことを発見することが、忘れてしまった時に選択的に記憶テストを回避するサルの能力を裏付けるメカニズムであることを示した。(野村)

The domestication of social cognition in dogs
(イヌにおける社会的認知の家畜化)
Hare, B., Brown, M., Williamson, C., & Tomasello, M. (2002)
Science, 298, 1634-1636.

イヌは、隠れたエサの場所を示すヒトによる伝達信号を読み取らなければならない多くの課題において、大型類人猿に比べより高い能力を持っている。この研究では、ヒトに育てられたオオカミがこれらと同じ能力を見せないのに対し、生後わずか数週間の飼いならされた仔犬が、ヒトとの接触がほとんどないにもかかわらず、同じ能力を見せる、ということを発見した。これらの発見は、家畜化の過程で、イヌが、独自の方法でヒトとコミュニケーションすることを可能にする一連の社会的認知能力を備えるように選択されてきた、ということを示唆している。(馬場)

開講日 | 2015年10月13日 4・5限 -17:00 場所 | E304