Seminar

後期ゼミ1回目 論文紹介(佐藤・田中)

論文紹介(佐藤・田中)

Contagious yawing in chimpanzees.
(チンパンジーにおけるあくび伝染)
Anderson,J.R.,Myowa-Yamakoshi.,M.,&Matsuzawa,T.(2004).
Proceedings of the Royal Society London B;Biological Sciences,271,S468-S470.

6頭のメスのチンパンジーに、チンパンジーが繰り返しあくびをしているシーンと、あくびはせずに口を開けているシーンの映像を見せた。うち2頭のメスはただの口開けの映像よりもあくびの映像に応答して有意に高い頻度であくびをした。あくびを見たときよりも口開けを見たときに多くあくびをした個体はいなかった。母親と一緒にいた3頭の子供のチンパンジーは全くあくびをしなかった。これらのデータはヒトのあくびの伝染効果の報告とよく似ている。あくびの伝染は共感能力の基礎的な部分であると考えられている。したがって、チンパンジーにおけるあくびの伝染は、これらの類人猿は高度な自己認識と共感能力を有しているというさらなる根拠を提供する。(佐藤)

Cross-modal individual recognition in domestic horses (Equus caballus).
(ウマにおけるクロスモーダルな個体認識)
Proops, L., McComb, K., & Reby, D. 2009
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 106,947-951.

個体識別は幅広い動物分類群に見られると信じられているが、複雑な過程と考えられており、この能力を支える認知メカニズムはあまりわかっていない。ヒトにおける個体識別の本質的な特徴は、それがクロスモーダルであり、ある特定の人物に関する最新の感覚的手がかりを、他の様相から得てすでに貯蔵されている(その人物に関する)情報と一致させることを可能にする点である。本研究はクロスモーダルな期待違反法を用いて、ヒト以外の動物(飼育されているウマ)がクロスモーダルな個体識別をするという明確で体系的な証拠を提供する。被験体はまず、群れの中の1頭が自身のそばを通り過ぎて、その場から立ち去るのを観察した。その後、被験体は、その個体が姿を消した位置の近くに設置されたスピーカーから、立ち去った個体と同一個体の声または全く別の個体の声を聞いた。その結果、ウマは立ち去った個体と同一の個体の声が聞こえたときよりも。その個体とは別の個体の声が聞こえてきたときに、より速く反応し、その声のする方をより長く注視した。この結果は、不一致の組み合わせが彼らの期待に違反したということを示唆しているのである。したがって、ウマは特定の聴覚と視覚/嗅覚の情報を含んだ既知個体のクロスモーダルな表象を持っているように思われる。私たちの方法は多様な種の個体識別を研究するための有力な方法を提供することができたといえよう。(田中)

開講日 | 2015年10月06日 4・5限 場所 | E304