Seminar

論文紹介(長野・林)

3年生の長野さんと林くんが論文紹介をしました。

The effects of age, rank and neophobia on social learning in horses
ウマの社会的学習における年齢・順位・新奇恐怖の効果
Krueger, K., Farmer, K. & Heinze, J. (2014). Anim Cogn 17, 645–655.
DOI: 10.1007/s10071-013-0696-x

Abstract
 社会的学習は、個々が資源を競い合い分け合うような個体間競争や助け合いがある複雑な環境に対応すると言われている。ウマ(Equus caballus)は闘争の理由がほとんどないような均等に分散した餌を食べるので社会的学習をしないと考えられていた。しかし、ウマの社会的環境は複雑で、ウマの採食行動の社会的伝達能力は過小評価されていたという可能性が高まった。集団飼育されているさまざまな年齢の30頭のウマで社会的学習の実験を行った。5グループに分け、それぞれのグループから一頭ずつデモンストレーターが5頭選ばれ、残りの25頭はオブザーバーとされた。各グループのオブザーバーは同じグループのデモンストレーターが餌箱を開けるのを見られるようになっていた。若く、低順位で探索的なウマは同じグループの年上のメンバーを観察して学び、年を取るほど学ぶのが遅くなっているように見えることがわかった。社会的学習は社会的環境への適応的特化といえるかもしれない。年上のウマは、複雑で潜在的に不利な採餌行動を若いメンバーから学んで獲得してしまう潜在的コストをさけているのだろう。ウマは彼らがもつ社会生態学的背景の中で社会的学習をみせたと言える。また、研究方法にはそのような背景を考慮に入れる必要があると言える。ウマの社会性に関する間違った考えが先行研究の妨げになっている。(長野)

旧世界ザルにおける社会的知性:生態学的側面と発達的側面に注目して
山田一憲. (2009). 動物心理学研究, 59(2), 199-212.
DOI: 10.2502/janip.59.2.2

Abstract
霊長類は社会的動物である。本稿では、旧世界のサルの社会行動に関する研究を概観し、次の3点を述べる。
1.霊長類は複雑で動的な社会集団で生活している 。
2.霊長類は比較的大きな大脳新皮質を持っており、複雑な社会環境を理解するための学習期間として、比較的長い幼年期を持つ。
3.霊長類の乳児は、母親との相互作用を通じて社会化され、複雑な社会的な能力を獲得する。
霊長類の社会性は日常生活において重要な役割を担っているので、社会環境が社会的知能に及ぼす影響を調査するためには、霊長類の心をより深く理解することが必要である。(林)

 

開講日 | 2023年06月28日 13:00~16:15 場所 | E304