論文紹介(富所・高倉)
Dog Breed Differences in Visual Communication with Humans
(ヒトとの視覚コミュニケーションにおけるイヌの品種差)
Konno A, Romero T, Inoue-Murayama M, Saito A, Hasegawa T (2016).
PLoS ONE , 11(10): e0164760. doi:10.1371/journal. pone.0164760.
家畜化されたイヌ(Canis familiaris)は、家畜化過程を通じて人間と密接な関係を築いてきた。人間とイヌの相互作用において、アイコンタクトは関係の開始と維持の重要な要素である。これまでの研究では、ヒトに向けたコミュニケーションシグナルを生産するイヌの能力は、特定の作業目的のための最近の品種改良だけではなく、イヌのオオカミからイヌへの家畜化の歴史に影響を受けていることが示唆されている。純血種におけるこのような能力の遺伝的基礎を調べるために、我々はヒトに対する注視行動を、「視覚接触タスク」と「解決不可能タスク」の2種類の行動実験を用いて調べた。合計125匹のイヌがこの研究に参加した。品種間の遺伝的関連性に基づいて、参加個体は古代、牧畜、狩猟、レトリーバーマスチフ、および作業)の5つの品種群に分類された。古代の品種が人間とアイコンタクトをとるのに時間がかかり、解決不可能な状況で他の品種群よりも人を注視する時間が短いことが分かった。我々の発見は、人間に対する自発的な注視行動は、特定の作業種を作るための最近の選択圧ではなく、オオカミに対する遺伝的類似性と関連していることを示唆している。(富所)
Dogs recognize dog and human emotions
(イヌはイヌとヒトの感情を認識する)
Albuquerque, N., Guo, K., Wilkinson, A., Savalli, C., Otta E,, & Mills, D. (2016).
Biology Letters, 12, 20150883.
感情表現の認識は、動物がお互いの社会的意思と動機を評価することを可能にする。これは通常種内で起こる。しかし、家庭犬の場合、他のイヌの感情と同様にヒトの感情を認識することが有利かもしれない。この意味で、他者の感情を分類するための視覚と聴覚の手がかりの組み合わせは、情報処理を容易にし、高レベルの認知表現を示す。クロスモーダルの選好注視パラダイムを用いて、異なる感情価(幸せ/陽気 対 怒り/攻撃的)を有するヒトまたはイヌの画像を、ポジティブまたはネガティブの感情価またはブラウンノイズのいずれかを伴う同一の個人からの単一の発声と対にして、呈示した。イヌは、同種と異種の両方に対して、発声の感情価と一致する表情を有意に長く見せていた。これは、以前はヒトでしか知られていなかった能力である。これらの結果は、イヌが二つの感情情報を抽出して統合し、ヒトとイヌの両方からの肯定的な感情と否定的な感情とを区別できることを示している。(高倉)
開講日 | 2017年07月19日 14:45-18:00 場所 | E304