Seminar

論文紹介(喜多)

Orthographic processing in pigeons (Columba livia)
(ハトの正書法処理)
Scarf, D., Boy, K., Reinert, A. U., Devine, J., Güntürkün, O., & Colombo, M. (2016).
Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(40), 11272-11276.

読みの学習は文字と音の関係性の獲得と、また視覚的に単語を認識する能力(orthographic knowledge)と関連する。文字と音の対応づけ(前者)は、言語に根ざしたものであって明らかに人間固有であるが、正書法処理(後者)については、外適応あるいは自然環境における日常のものや形を認識するために進化したとされる視覚回路のリサイクルに由来しているかもしれない、と最近の研究や理論が示唆している。一つの開かれた問いは、正書法処理がヒトに似た視覚回路に限定されるのか、それとも多くの脊椎動物の視覚システムに共通の、可塑的な産物であるのかということだ。ここで、著者らは3億年以上前に人と分かれたとされる有機体、ハト、が言葉を正書法的に処理することを示す。単語と非単語を区別するよう訓練されたハトは、単語を定義する正書法の特性 (orthographic property) を理解し、いままでに見たことがなかった単語を特定するためにその知識を使うことを明らかにする。加えてハトは、文字列の組み合わせの生起頻度、単語非単語間の距離、単語の内部構造に敏感である。著者らの発見は、霊長類の視覚システムと組織的にかけ離れた(ハトの)視覚システムもまた視覚的な単語形状を処理するように外適応しうる、あるいはリサイクルされうる、ということを示す。(喜多)

開講日 | 2016年12月14日 14:45-18:00 場所 | E304