論文紹介(野村・須山)
Social referencing and cat-human communication
(社会的参照とネコ-ヒト間のコミュニケーション)
Merola,I., Lazzaroni,M., Marshall-Pescini,S., & Prato-Previde,E.(2015)
Animal Cognition, 18, 639-648.
ネコのヒトに対しての伝達行動が、恐ろしいかもしれない物体に対して、社会的参照パラダイムを用いて調査された。あるネコのグループは飼い主のポジティブな感情を読み取ったが、別のグループはネガティヴな感情を受け取った。この調査のねらいは、ネコが、飼い主から呈示される新しいまたは馴染みのない物体に対しての感情情報を、ネコ自身の行動の手本として利用するかどうかを評価することにある。私たちは以下の観点より社会的参照の存在を評価した。①飼い主を参照のために見たか。(物体を見た前後すぐに飼い主を見ることと定義する。) ②行動の統制が飼い主の感情(positive VS negative)メッセージ(声や顔によるもの)に基づいているか。③飼い主の物体に対しての行動に従った調整が見られるか。多くのネコ(79%)が飼い主を参照的に見て、ある程度飼い主からの感情メッセージに従って行動を変化させた。結論では他種(特にイヌ)の社会的参照の関連と、ネコの社会組織と家畜化の歴史について議論されている。(野村)
Computational Constraints on Syntactic Processing in a Nonhuman Primate
人間以外の霊長類における統語的処理の計算機科学的制約
Fitch, W. T. & Hauser D. M. (2004).
Science, 303, 377-380.
人間の言語を他の動物のコミュニケーションと分け隔てるものは限定された要素から無限大の表現を行える力である。無限大の出力を生み出す規則(文法)はどの規則を使うかでその生成力が異なる。最も弱い生成力のある規則は最近傍の単語同士の結びつきのみを規定する規則である。弁別課題を用いると猿はこの手の文法規則をすぐ覚えられることがわかった。しかし、人間が使う文法は階層性を含めた文法規則も存在する。上記と同じ手法、刺激、刺激の長さで学習した猿はこのような階層性(句構造規則)の文法規則は弁別できなかった。(須山)
開講日 | 2016年05月11日 14:45-18:00 場所 | E304