後期ゼミ13回目 論文紹介(山田・須山)
論文紹介(山田・須山)
Oxytocin-dependent consolation behavior in rodents.
(オキシトシンに基づくネズミの慰め行動)
Burkett, J. P., Andari, E., Johnson, Z. V., Curry, D. C., de Waal, F. B. M., Young, L. J. (2016). Science, 351, 6271, 375-378.
ストレスを感じている個体に対する慰め行動は、人間や大型霊長類に共通にみられる。
しかし、実験動物の不足により、慰め行動の生物学的なメカニズムはまだ十分に検証されていない。そこで本研究は、高度な社会性と一夫一妻制を備えたプレーリーハタネズミの実証データを紹介する。彼らは、ストレス状態にある親密な個体に対し、Social buffering* としての毛づくろい行動を示す。さらに、プレーリーハタネズミは、ストレス個体と同様の恐怖反応や不安関連行動を示し、血中のコルチコステロン** 値が上昇する。
これらの知見は、慰め行動の背後に、共感メカニズムが働いていることを示唆している。
プレーリーハタネズミは、ストレス状態にある個体と対峙することで前帯状皮質(ACC)が賦活する。加えて、またオキシトシン受容体阻害薬をACCに注入することでパートナーに向けた反応が抑制される。これらの神経メカニズムは、プレーリーハタネズミと人間において見られるものである。(山田)
*Social buffering:相手のストレスを緩和する行為
**コルチコステロン:副腎皮質ホルモンの一種で、ストレスに対して分泌され対ストレス反応をもたらす
Chimpanzees Trust Their Friends.
(チンパンジーは自分の友だちを信頼する)
Engelmann, J. M. & Herrmann, E. (2016).
Current Biology, 26, 252-256.
協力的な個体を探すことは協力を生存の軸とする種にとって重要な問題になる。この問題への一つの方略として友達関係を築きくことがあげられる。人間のおいてどのように友人関係を築き信頼の問題を解決したかまだわからないことが多い。この起源を探る上でチンパンジーを研究することが有効になる。チンパンジーも選択的な行動を行うことは様々な研究からわかっているがそれが信頼から生まれているのか不明である。この研究では信頼ゲームをチンパンジーでもできるように改変し実施した。その結果、チンパンジーは創りだされた友達の方がそうでない個体よりも信頼行動を示すことがわかった。このことから親しい関係の個体とだけ信頼行動を示すことが人間が分岐する前からあった可能性をしさした。(須山)
開講日 | 2016年02月09日 4・5限 場所 | E304