研究計画の相談(野崎)・卒論紹介(宮川)・文献紹介(砂後谷)
M1の野崎さんが研究計画の相談を行い、みんなで議論しました。また、3年生の砂後谷さんが文献紹介、4年生の宮川さんが卒論の紹介をしました。
Lewis, L. S., Wessling, E. G., Kano, F., Stevens, J. M., Call, J., & Krupenye, C. (2023). Bonobos and chimpanzees remember familiar conspecifics for decades.
ボノボとチンパンジーは馴染みのある同種個体を何十年も記憶している
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States, 120(52), e2304903120.
Abstract
馴染みのある同種個体の認識と記憶は、複雑な社会性の基盤を形成し、予測不可能な社会環境を生き抜く上で不可欠である。人間の社会的記憶は、過去の相互作用や人間関係に関する内容を含み、数十年にわたって保持されることがある。このような長期的な社会的記憶は、人類の進化の過程で重要な役割を果たしてきたと考えられる。動物の間では個体識別能力は広く見られ、数年間続く場合もあるが、非ヒト類人猿における社会的記憶の持続性や、人間の社会的記憶との進化的共通性については、これまでほとんど解明されていなかった。そこで本研究では、選好注視(preferential-looking)課題とアイ・トラッキング手法を用いて、チンパンジーおよびボノボ(N = 26)に、過去のグループ仲間と、同性の見知らぬ個体の顔写真を並べて提示した。その結果、類人猿の注視は元グループ仲間の方に偏り、これは過去の社会的パートナーに対する長期的な記憶が存在することを示唆している。また、分離していた期間の長さは注視の偏りに影響せず、記憶は最長26年の分離期間を経ても保持されている可能性があることが明らかになった。さらに、ヒトと同様に、過去によりポジティブな社会的相互作用があった個体に対して、注視の偏りが強くなるという傾向も確認された(ただしその証拠は有意ではあるが弱い)。このような長期にわたる社会的記憶は、時間・空間・集団を超えて広がる人類の文化や社会性の進化の鍵となる土台を提供してきた可能性が高いと考えられる。
開講日 | 2025年05月21日
13:00ー16:15
場所 | E304