研究の進歩報告と文献紹介(塚原)・文献紹介(山本)
3年生の塚原さんが研究の進歩報告と文献紹介を行い、みんなで議論しました。また、3年生の山本さんが文献紹介をしました。
Observational learning in capuchin monkeys: a video deficit effect.
フサオマキザルにおける観察学習:ビデオによる情報欠損の効果
Anderson, J. R., Kuroshima, H., & Fujita, K. (2017). Quarterly Journal of Experimental Psychology, 70(7), 1254-1262.
DOI:https://doi.org/10.1080/17470218.2016.1178312
要旨
人間の幼い子どもたちは、ビデオやテレビの映像から学ぶ方が、実際の実演から学ぶよりも効果が低いことが示されている。 人間以外の霊長類はビデオ映像に反応し、そこから学習することができるが、ビデオと実際の実演を直接比較した研究はない。この知識のギャップを解決するために、人間の実演者がフサオマキザルに2つの容器のうち1つに餌を明示的に隠しているビデオを見せた。ビデオは通常速度、通常速度より速い速度、または通常速度より遅い速度で提示され、その後フサオマキザルは実際の容器のどちらかを選ぶことができた。55回のセッションと何百回ものビデオ演技の試行の後でも、フサオマキザルのパフォーマンスはタスクの習得を示しておらず、ビデオの速度による影響も見られなかった。隠れる演技を実演すると、サルのパフォーマンスは飛躍的に向上した。その後、ビデオ演技に戻ると、実際に実演する前のレベルまでパフォーマンスが低下した。しかし、今回は通常より速いビデオ演技の優位性が証明された。実演の動作速度は、霊長類がビデオ映像から学習する能力に影響を与える映像の一側面かもしれない。
Low plasma cortisol and fecal cortisol metabolite measures as indicators of compromised welfare in domestic horses (Equus caballus).
家畜ウマ(Equus caballus)における福祉低下の指標としての、血漿中コルチゾールおよび糞中コルチゾール代謝物測定値の低下
Pawluski, J., Jego, P., Henry, S., Bruchet, A., Palme, R., Coste, C., & Hausberger, M. (2017). PLoS One, 12.
DOI :10.1371/journal.pone.0182257
要旨
慢性ストレスに対する視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の反応は、特に動物福祉に関しては、一筋縄ではいかない。慢性ストレス負荷後のコルチゾール値については、低下と上昇の両方が見られるだけでなく、影響がないという報告もある。したがって、本研究の第一の目的は、家畜ウマ(Equus caballus)において、慢性疼痛や血液学的異常といった福祉の低下を示す指標とコルチゾール値がどのように関連しているかを明らかにすることである。家畜ウマは、慢性的なストレス(環境、痛み、仕事、飼育環境などによる)がHPA軸に及ぼす影響を調べるのに有益なモデルである。第二の目的は、糞便中コルチゾール代謝産物(FCM)値が福祉の指標として使用できるかどうかを明らかにすることである。本研究では、フランスのブルターニュ地方にある3つの乗馬センターのウマ59頭(牡馬44頭、牝馬15頭)を使用した。主な知見として、明らかに福祉が損なわれているウマ(異常な耳の後方位置、脊椎の問題、貧血などの血液学的異常の存在によって示される)は、FCMと血漿コルチゾールの両方の値が低いことが示された。この研究は、ウマの抑うつ様行動の指標である引きこもり姿勢が血漿コルチゾール値の低下と関連することを示した我々の以前の知見を拡張するものである。また、夕方の血漿コルチゾール値はウマのFCM値と正の相関があることもわかった。今後の研究では、生活環境(放牧地やパドックでの集団飼育と単独飼育)、若い頃の生活、人間との交流などの福祉に影響を与える要因が、ウマのコルチゾール値の媒介因子としてどの程度作用するかを明らかにすることを目指す。
開講日 | 2024年12月11日 13:00~16:45 場所 | E304