論文紹介(上河内・長瀬)
4年生の長瀬さんと3年生の上河内さんが論文紹介をしました。
①The impact of paternity and early socialisation on the development of cats’ behaviour to people and novel objects
父子関係と早期社会化がネコの人間や新しいものに対する行動の発達に与える影響
Sandra McCune (1995).Applied Animal Behaviour Science, 45, 109-124
doi: 10.1016/0168-1591(95)00603-P
要旨
家猫(Felis siloestris catus)に関する発達的研究は、早期社会化と父親の友好性とその後の人への友好性について調査しました。子猫は生後2週間から12週間の間に取り扱われるか(社会化された群)取り扱われないか(非社会化された群)に分かれ、これらの子猫は「友好的な」父親または「不友好な」父親の子供でした。1歳になった時点で、これらの猫は3つの実験を受けました:(1)馴染みのある人物への反応、(2)見知らぬ人物への反応、(3)新しい物体への反応です。社会化された猫や友好的な父親の猫は、テスト対象者に対してより速く近づき、触れ、擦り寄り、より多く鳴き、1メートル以内により長い時間を過ごしました。新しい物体への反応の違いは、早期社会化の違いでは説明できませんでした。しかし、友好的な父親の猫は、不友好な父親の猫よりも、新しい物体に速く近づき、触れ、探索し、密接な接触を保ちました。遺伝的要因による猫の人への友好性の貢献は、大胆さとして解釈されました;それは、人であろうと物体であろうと、未知の物体に対する一般的な反応です。社会化の影響は、猫の人への反応に特化しています。社会化された猫と友好的な父親の猫は、見知らぬ人に対して友好的であり、また彼らに近づかれ、扱われる際の苦痛が少なかったです。(上河内)
②The quality of being sociable: The influence of human attentional state, population, and human familiarity on domestic cat sociability
社交性の質:人間の注意状態・集団・人間の親しさが家庭ネコの社交性に与える影響
Kristyn R. Vitale, Monique A.R. Udell (2019). Behavioural Processes 158, 11-17
doi: 10.1016/j.beproc.2018.10.026
要旨
家庭内猫の社交性における人間の注意状態、人口、および人間の馴染み度の影響を評価するために、2つの実験が行われました。社交性の行動には、人間との接近時間や接触時間、鳴き声の頻度が含まれました。人間の注意状態が猫の行動に影響を与え、ペット群(U(22) = 389, Z = -2.72, P = 0.007)およびシェルター群(F(44) = 15.34, P = 0.0003)の両方で、猫は注意を向けている人間と有意に多くの時間を近くで過ごしました。猫の集団は社交性に影響を与え、シェルターの猫はペットの猫に比べて、注意を向けていない見知らぬ人との接近時間が長かったです(U(44) = 91, Z = 3.8, P = 0.0001)。さらに、ペットの猫に比べ、シェルターの猫群では見知らぬ人の注意を引く段階で鳴き声を上げる個体が多かった(Fisherの正確確率検定、P = 0.02)。人間の馴染み度はペットの猫の社交性行動に有意な影響を与えませんでした。全体的に見て、広範囲の社交性スコアが見られ、猫の社会行動における個体差が重要な考慮事項であることを示しています。この分野での将来の研究は、強い猫と人間の絆が形成される条件を予測し、猫の行動についてより包括的な科学的理解を確立するでしょう。(上河内)
開講日 | 2024年06月26日 13:15ー16:15 場所 | E304