Seminar

論文紹介(長野・山本)

4年生の長野さんと3年生の山本さんが論文紹介をしました。

The eyes and ears are visual indicators of attention in domestic horses 目と耳は家畜ウマの注意の視覚的指標
Wathan, J., & McComb, K. (2014). Current Biology, 24(15), R677-R679.
doi: 10.1016/j.cub.2014.06.023

要旨
他者の注意状態に敏感であることは適応的な利点があり、社会的な動物にとって他者に注意を向けることは、捕食者の検知や正常な社会的機能・より複雑な社会認知能力の前提条件として重要である。社会的な種が他者の注意をどのように知覚するかについては広範な関心があるが、非人間動物の研究では、それに関わる詳細な手がかりについて結論が出ていない。先行研究では頭部や目の方向に焦点を当ててきたが、多くの哺乳類は視覚的手がかりとして機能し得る、目立ち、可動する耳を持っていることが見落とされている。ここでは、馬が同種個体の頭の向きを使って食物の位置を特定するが、顔の一部(目と耳)が不自然でないマスクで覆われるとこの能力が妨げられることを報告する。また、注意を正しく判断する能力はモデル馬の個体識別と相互作用しており、顔の特徴における個体差が手がかりの顕著さに影響を与えることを示唆している。これらの結果は、社会的注意を伝達するには頭の向きと顔の表情(特に目と耳の両方)が必要であることを示している。非人間動物における注意の伝達を理解するためには、広範な手がかりを考慮することが重要であることを強調している。(長野)

Behavioral and hormonal assessment of stress in foals (Equus caballus) throughout the weaning process.
Delank, K., Reese, S., Erhard, M., & Wöhr, A. C. (2023). Plos one, 18, e0280078.
doi : 10.1371/journal.pone.0280078
 
要旨
本研究の目的は、離乳の中期的効果(3週間)が子ウマの福祉に及ぼす影響を明らかにすることであった。この目的のため、子馬の行動変化と糞便中のコルチゾールの代謝物レベルを評価した。観察はドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州立種馬場で行われた。10頭の子ウマ(雄ウマ6頭、牝ウマ4頭)を離乳1日前から離乳3週間後まで観察した。離乳は3つのブロックに分け、最初は9月、2回目は10月、最後は11月に行った。行動観察は午前7時から午後5時までの8時間行われた。観察者は8時間の間、子ウマが示した行動を5分ごとに正確に記録した。子ウマが経験したストレスを測定するため、グルココルチコイド代謝物11,17-ジオキソアンドロスタンを11-オキソエチオコラノロン酵素免疫測定法で測定した。すべての子ウマは、糞便中のコルチゾール代謝物レベルの上昇を通じて、離乳に対する明確なホルモンストレス反応を示した。体位分布は離乳前の移動中心から、離乳後3週間は立位休息中心へと変化した。離乳前日と比較して、子ウマの活動行動は減少し、休息行動が有意に増加した。全体的な休息行動については、離乳した子ウマは当初、日中に横臥位休息する時間が増加し、その後、横たわる時間が減少し始めた。離乳後、子ウマは立位休息する時間が有意に増加した。結論として、子ウマは予想通りの行動変化を示し、コルチゾール代謝産物値の曲線も予想通りであった。しかし、その変化は離乳後3週目になっても元通りには戻っていないようであった。したがって、離乳した子ウマは新しい状況に慣れるために最低3週間は必要であることが示唆される。(山本)

開講日 | 2024年06月19日 13:00ー16:15 場所 | E304