論文紹介(米村・長瀬)
M2の米村さんと3年生の長瀬さんが論文紹介をしました。
Chimpanzees (Pan troglodytes) learn to act with other individuals in a cooperative task.
チンパンジー(Pan troglodytes)は協力課題で他の個体と協力する方法を学ぶ
Hirata, S., & Fuwa, K. (2007). Primates 48, 13–21.
DOI: 10.1007/s10329-006-0022-1
Abstract
本研究では2匹のチンパンジーに、食べ物を手に入れるために協力してロープの両端を同時に引くという課題を与えた。最初のテストでは、チンパンジーは成功しなかった。彼らはすぐに協力の必要性を理解せず、パートナーと協力するために行動を調整しなかった。しかし、セッションの回数が増え、課題が多様化するにつれて、成功の頻度は徐々に増加した。彼らは頻繁に相手を見るようになり、相手がロープを持っていない場合は待ち、相手と同時にロープを引くようになった。ただし、彼らは行動を同期させるために対話的な行動や視線の接触は使用しなかった。その後、1匹のチンパンジーに同じ課題の内容でヒトとペアを組ませた。最初は失敗したが、その後、ヒトの顔を見上げたり、声を出したり、手を取ったりして、協力を求めるようになった。このチンパンジーが再びチンパンジーとペアを組まされたとき、協力を求める行動は見られなかった。このように、チンパンジーは試行錯誤を通じて行動を調整することを学ぶことができた。課題中にコミュニケーション行動が現れたが、その内容は相手の種によって異なった。(米村)
Cognition and the human–animal relationship: a review of the sociocognitive skills of domestic mammals toward humans.
認知と人間と動物の関係:レビュー 家畜動物の対ヒト社会認知能力に関する考察
Jardat, P., & Lansade, L. (2022).Animal Cognition, 25(2), 369-384.
DOI: 10.1007/s10071-021-01557-6
Abstract
過去20年間、動物の人間に対する種間社会認知能力に焦点を当てた研究が発展してくることで、ヒトと動物の相互作用をより深く理解することができるようになった。本総説では、ヒトに対する家畜哺乳類の社会認知能力として、人間の情動を理解すること、人間の注意状態や目標を解釈すること、参照的コミュニケーション(人間のシグナルを感知したり、人間にシグナルを送ったりすること)を用いること、人間との社会的学習(例:局所的強化、デモンストレーション、社会的参照)を行うことの5つに焦点を当てる。
この問題に関する文献が利用可能な家畜動物の異なる種(ネコ、ウシ、イヌ、フェレット、ヤギ、ウマ、ブタ、ヒツジ)に焦点を当てた。その結果、人間を認識したり、人間から送られる感情やシグナルを察知して解釈したりする能力があることがわかった。
例えば、羊や馬は写真に写った飼育係の顔を認識し、犬は恐怖の匂いに反応し、豚は指差しのジェスチャーを追うことができる。しかし、研究は種によって偏りがある。イヌのように人間と密接に暮らす動物での研究は多いが、ウシやブタのような家畜動物についてはほとんど知られていない。しかし、既存のデータに基づくと、動物の人間に対する認知能力とその生態学的特性との間に明らかな関連性は見られない。また、家畜化の歴史や理由との関連も明らかになっていない。このレビューは、この種の研究を継続し、より多くの能力や種に拡大することを奨励するものである。(長瀬)
開講日 | 2023年10月25日 13:00ー16:15 場所 | E304