Seminar

論文紹介(中村大斗)・輪読会③「進化でわかる人間行動の事典」食べる・道具を作る使う・見つめる(高橋)

4年生の中村くんが論文紹介をしました。また、本日から「進化でわかる人間行動の事典」の輪読会を開始しました。まずは、研究生の高橋くんが「食べる」「道具を作る・使う」「見つめる」を発表しました。

Familiarity bias and physiological responses in contagious yawning by dogs support link to empathy.
イヌの伝染性あくびにおける親近感バイアスと生理的反応は共感性に関連する
Romero ,T., Konno, A. & Hasegawa, T. (2013) PLoS ONE 8(8), e71365.
DOI: 10.1371/journal.pone.0071365

Abstract
ヒトの場合、あくびの伝染しやすさは共感能力と理論的・経験的に関連している。進化生物学との関連から、この現象はヒト以外の生物種でも研究が進められている。共感仮説に基づき、伝染性あくびは、いくつかの霊長類において社会的愛着の度合いと相関することが示されている。また、イエイヌ (Canis familiaris) にも伝染性のあくびをする能力があることが示されている。しかし、これまでのところ、イヌの伝染性あくびの社会的変調は矛盾した支持を受けており、別の説明 (すなわち、軽度の苦痛反応としてのあくび) でポジティブな証拠を説明できる可能性がある。本研究では、イヌにおける伝染性あくびを再現し、2つのあり得る媒介メカニズム (すなわち、共感反応と苦痛関連反応) を識別することを目的とする。25頭のイヌが、親しいヒト (イヌの飼い主) と見知らぬヒト (実験者) があくびをする様子とコントロールされた口の動きを観察した。また、被験者のうち21名について、同時に生理学的測定 (心拍数) を追加でモニターした。あくびの伝染の発生は、あくびをする条件下で、コントロール条件のときよりも有意に高かった。さらに、イヌは見知らぬモデルよりも親しいモデルを見たときにあくびをする頻度が高く、イヌのあくびの伝染性は感情の近接度合いと相関することが示された。また、被験者の心拍数は条件間で差がなかったことから、イヌのあくび伝染現象はストレスを感じる事象と無関係であることが示唆された。この結果は、伝染性あくびが感情的な要素によって調節されるという見解と一致し、イエイヌに初歩的な共感性が存在する可能性を示していると考えられる。(中村大)  

開講日 | 2023年05月17日 13:00~16:15 場所 | E304