論文紹介(若生)
4年生の若生さんが論文紹介をしました。
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Number of nearby visitors and noise level affect vigilance in captive koalas
(近接来園者数と騒音レベルは飼育下のコアラの警戒行動に影響を及ぼす)
Larsen,M.J., Sherwen,S.L., & Rault,J.L. (2014), Applied Animal Behaviour Science, 154, 76-82
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2014.02.005
Abstract
人と動物の相互作用を理解することは、動物を一般に公開している施設では、見慣れない人間と頻繁に、そして時には激しく交流するため、特に重要である。これまでの研究により、来園者がエネルギー代謝に影響を与えるストレス反応を活性化させることで、飼育下の様々な種の動物の福祉に悪影響を与えることが分かっている。コアラ(Phascolarctos cinereus)は、エネルギー含有量の極めて低い特定の餌で進化してきたため、特にストレスによる影響を受けやすいと考えられている。しかし、飼育されているコアラの行動や福祉に及ぼす来園者の影響に関する知見はほとんどない。飼育下のコアラの個体群を対象に、来園者数(Study 1)と来園者の騒音(Study 2)の影響を調査した。研究1では、来園者数が多い4日間と少ない4日間の合計8日間、コアラの行動観察を行った。2 分毎にスキャンサンプリングを行い、コアラの行動、囲い内の位置、遊歩道との近さを記録した。また、各スキャンごとに遊歩道上の半径 5m 以内の来園者数(以下、「近接来園者」)を記録した。研究 2 では、3 段階の処理(来園者なし、静かな来園者、騒がしい来園者)で調査地から採取した来園者の騒音 の音声記録を用いて、来園者の騒音の影響を調査した。各コアラに各騒音処理を無作為に割り当て、1日1回、8日間にわたり、警戒行動の有無を記録した。研究 1 では、1 日の総訪問者数ではなく、近隣来園者数が増加すると、コアラの警戒時間が増加することが示された。研究2では、来園者の騒音が増加すると、コアラの警戒時間が増加することが示された。これらの結果は、コアラが来園者に対して行動的に反応することを示しており、コアラにおける来園者との関わりによる混乱を評価するためのモニタリングツールとして、行動観察の価値を支持するものである。これらの行動の変化が福祉に与える影響については、来園者によるネガティブな影響を最小限に抑えるための適切な管理戦略と同様に、まだ解明されていない。(若生)
開講日 | 2022年07月27日 13:30~16:00 場所 | E304