Seminar

論文紹介(若生)

学部3年の若生さんが論文紹介をしました。

 

Behavioral and physiologic responses to environmental enrichment in the maned wolf (Chrysocyon brachyurus)

「タテガミオオカミ(Chrysocyon brachyurus)の環境エンリッチメントに対する行動および生理的反応」

Cummings,D.,Brown,J.,Rodden,M., & Songsasen,N (2007). Zoo Biology, 26, 331-343.

 https://doi.org/10.1002/zoo.20138

人工飼育されているタテガミオオカミの個体群は、主に親としての能力の無さに起因する繁殖不良により、自立していない。環境を豊かにすることで、動物園動物の自然な親の行動を促すことができるという研究結果がある。本研究の目的は、環境エンリッチメントがタテガミオオカミの行動および生理的反応に与える影響を明らかにすることである。8週間の実験期間中、エンリッチメントのない環境で個別に飼育されている4頭の成体オオカミを対象に、毎日の行動観察と糞便サンプルの採取を行った。2週間後、オオカミは時系列的に、死んだマウスを展示室の周りに隠す、エンリッチメントなし、ブーマーボールを導入するという条件を2週間の間隔で与えられた。エンリッチメントに対するオオカミの反応は、研究期間中に毎日採取した糞便中のコルチコイド代謝物のレベルだけでなく、活動レベルや探索率に基づいて評価した。オオカミに環境エンリッチメントを与えると、特にマウスを飼育場の中に隠したときに、探索行動が有意に増加した(P<0.05)。糞便中のコルチコイド濃度は、エンリッチメント期間中にオスで増加したが(P<0.05)、メスでは増加しなかった。全体として、エンリッチメントに対する行動反応と糞便中のコルチコイド濃度との間に相関関係は見られなかった。行動学的な結果から、環境エンリッチメントは飼育下のタテガミオオカミの行動に良い影響を与えることが示唆された。餌を探す能力を与えることは、物を導入するよりも効果的なエンリッチメント戦略であることを示唆する証拠がある。この種における環境エンリッチメントの影響を明らかにするためには、より長期的な研究が必要である。(若生)

開講日 | 2021年12月08日 13:00 ~ 16:30 場所 | E304