Seminar

論文紹介(明日香・山本)

4年生の明日香さんと山本くんが論文紹介をしました。

Domestic cats (Felis catus) discriminate their names from other words.
「ネコ (Felis catus) は自分の名前を他の単語と区別する」
Saito, A., Shinozuka. K., Ito, Y., & Hasegawa, T. (2019). Scientific Reports, 9, 5394.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-40616-4

ヒトと相互作用する最も一般的な動物は、イヌ(Canis familiaris)とネコ(Felis catus)である。イヌとは対照的に、ネコがヒトとコミュニケーションをとる能力は、まだ研究され始めたばかりである。ネコがヒトの音声を識別できるかどうかを調べるために、馴化-非馴化法を用いた。本研究では、ネコはヒトが発した言葉を他の言葉、特に自分の名前と区別できるという仮説の下、一般家庭で飼われているネコ(家ネコ)がヒトの言葉による発話を識別する能力を調査した。その結果、実験1・3・4では、自分の名前と同じ長さとアクセントを持つ一般名詞を聞かされたネコは、その後自分の名前を聞いたときに強く反応した。これは、発声者が飼い主(実験1・3)と見知らぬ人(実験4)のいずれのときにも見られた。さらに、実験2では、家ネコは同居ネコの名前と自分の名前を区別するが、ネコカフェのネコ(カフェネコ)はそうではないことが示唆された。したがって、ネコは音素の違いに基づいて人間の発話の内容を区別できると結論づける。(明日香)

 
Early Social Networks Predict Survival in Wild Bottlenose Dolphins
野生のバンドウイルカにおいて早期の社会ネットワークは生存を保障する」
Stanton, M. A., & Mann, J. (2012). PLoS ONE, 7(10), e47508.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0047508

集団で生活する種における重要な疑問点は、社会性の進化に影響を与えるのはどのような要因なのかということである。いくつかの研究においては、成体の社会的絆を適応と結び付けているが、社会形式や社会関係は早期の段階で形成されることが多く、それらは特に長い成長期・広範な社会的学習・早期の社会的絆形成をする種において適応する可能性が高い。バンドウイルカ(Tursiops sp.)の縦断的研究で、若年個体の社会的ネットワーク構造、具体的には固有ベクトルの中心性がオスの若年個体の生存を予測した。さらに、離乳後に死亡したオスの若年個体は、生き残ったオス個体よりも、他のオスの若年個体と強い結びつきがあることが分かった。このことから、若年のオスが同年代の相手に適応コストを課していることが示唆される。私たちの研究は、選択というものが生涯の早い段階で社会的特性に作用していることを示しており、生涯を形成していく段階で社会的絆のコストと恩恵を調査する必要性を強調している。(山本)

開講日 | 2019年11月06日 14:45~18:00 場所 | E304