Seminar

論文紹介(和田・戸松)

3年生の和田さんと戸松くんが論文紹介してくれました。

Rumble vocalizations mediate interpartner distance in African elephants, Loxodonta africana
アフリカゾウにおいてRumble音声はパートナー間の距離を調整する」
Leighty, K. A., Soltis, J., Wesolek, C. M., & Savage, A. (2008). Animal Behaviour, 76(5), 1601-1608.
コンタクトコールを社会的パートナーとの再会を容易にするために利用する能力は、離合集散社会に暮らす多くの種において報告されてきた。フィールドでの観察と音声再生実験から、アフリカゾウが低周波のRumble音声を、離散の後に群れのメンバーと再会するために用いていることが示されている。デジタル化した音声とGPSを記録する首輪装置を用いて、Disney’s Animal Kingdom, Bay Lake, Florida, U.S.A.に暮らすアフリカゾウの大人メス5頭についてRumble音声の発声とその後の動きを記録した。この記録システムによって、Rumble音声の発声者を特定し、発声者と関連した群れメンバーの動きに対するRumble音声の効果を記録することが可能になった。我々の発見は、自然に発されたゾウのRumble音声が、群れメンバーの空間的な関係の伝達に機能することに対する最初の実験的な証拠となる。概して、Rumble音声の発声は発声者とその社会的なパートナーとの距離を減少させた。この近接行動は、パートナーと発声者の親密度が高い場合、パートナーが鳴き返した場合、最初に発声者とパートナーが遠く離れていた場合(≥61m) に促進された。発声者とパートナーが最初の発声の前に近接しており、パートナーからの鳴き返しがない場合にのみ、Rumble音声の発声は回避行動を生じさせた。この結果は、ゾウのRumble音声の一般的な機能は、離れてしまった群れメンバーとの空間的な団結を促進することであるが、他のさまざまな近距離での社会的相互交渉についても伝達している可能性があることを示唆している。(和田)
 

 

Long-term effects of early mothering behavior on responsiveness to the environment in vervet monkeys 
ベルベットモンキーの環境への反応に早期の育児行動が及ぼす長期的な影響」

Fairbanks, L. A. & McGuire, M.T. (1988). Dev Psychobiol, 21, 711–724.
 
早期の母親の育児スタイルが、子供(juvenile)の外部の環境への反応に及ぼす長期的な影響を、自然構成された平静な2つの社会グループのベルベットモンキー(Chlorocebus pygerythrus)で調べた。35組の母親と乳児のペアの育児行動を主成分分析し、保護性と拒否という2つの独立した次元があることが明らかとなった。保護性は高レベルの近接・接触・抑制・母親の乳児に対する探索によって特徴づけられ、拒否は高レベルの拒否・接触の中断・乳児から離れる行為と関連していた。1歳と2歳の個体を観察した際に、彼らが居住空間の外部を見るのに費やした時間の割合を測定すると早期に保護的な育児行動を受けた子供は外部の環境に対し興味を示している様子があまり見らなかった。また、彼らは保護的ではない母親の乳児に比べ、完全に新奇環境へ移動するまでの時間が長くかかった。母親の拒否と、外部を見る時間及び新規の環境へ移動するまでの時間との間には、有意な関連がみられなかった。この結果は、年齢・性別・母親のランクに基づく行動の影響からは独立している。(戸松)
 

開講日 | 2019年10月02日 14:45~18:00 場所 | E304