論文紹介(馬場・富所)
Social grouping tendencies and separation-induced distress in juvenile sheep and goats
「幼いヒツジとヤギにおける社会的集団傾向と分離によるストレス」
Lyons, D.M., Price,E.O., & Moberg, G.P. (1993) Developmental Psychology, 26(5): 251-259. doi: 10.1002/dev.420260503
幼いヒツジとヤギにおける社会的に親密な関係が、集団傾向と、ペンメイトの存在または不在下で、人間と実験的に遭遇している間の分離ストレスを測定することによって比較された。ペンメイトと一緒にテストされたときは、ヒツジは、ヤギと比べ、より長い時間をペンメイトのそばで過ごした。ペンメイトと離されたときには、動きの活発さや血漿中のコルチコステロイド濃度がヒツジにおいて高く、一方で発声割合はヤギにおいて高かった。ペンメイトとの接近性スコアは一個体でテストされたときに記録された発声割合とも、動きのスコアとも相関していなかった(発声:r = 0.20; 動き:r = 0.21)。ペンメイトとの近接スコアはテスト後のコルチコステロイド濃度と相関しており ( r = 0.70)、ヒツジはペンメイトの近くでより長い時間を過ごし、一時的にペンメイトと離されたときに副腎皮質が大きく反応した。これらの知見は、種間の情動的反応性における違いが、これらの有蹄類が自然環境下または比較的制限のされていない社会集団において見せる集団傾向の違いの一因となっている可能性を支持した。(馬場)
Neural mechanisms for lexical processing in dogs
「イヌにおける語彙処理のための神経メカニズム」
Andics, A., Gábor, A., Gácsi, M., Faragó, T., Szabó, D., & Miklósi, Á (2016) Science, 353, 1030-1032. doi: 10.1126/science.aaf3777
音声処理中、ヒトは語彙とイントネーションのてがかりを別々に分析して、総合的なコミュニケーションの内容に達することができる。この能力の進化は、比較研究によって最もよく調査することができる。fMRIを用いて、イヌの脳が語彙情報とイントネーション情報を分離し、統合するかどうか、またどのようにそれを行っているかを探った。我々は、イントネーションとは関係なく、意味のある単語を処理するための左半球バイアスを発見した。また、右半球聴覚領域はイントネーション的に特徴のある単語、及びそうでない単語を区別し、語彙情報とイントネーション情報の両方が賞賛と一致した場合にのみ一次報酬領域の活動が増加した。イヌに語彙とイントネーションを別々に分析して統合する神経メカニズムがあることは、この能力が言語がなくても進化する可能性があることを示唆している。(富所)
開講日 | 2018年01月10日 14:45~18:00 場所 | E304