Seminar

論文紹介(上田)

Emotional contagion in dogs as measured by change in cognitive task performance.
「認知課題の成績の変化によって測定されたイヌの情動伝染」
Sümegi, Z., Oláh, K., & Topál, J. (2014).
Applied Animal Behaviour Science, 160, 106–115. doi:10.1016/j.applanim.2014.09.001

家畜化されたイヌは、ヒトとの特別な異種の結びつきを築き、ヒトと共に生活している。先行研究では、ポジティブなふれあいの中で、生理反応やホルモンの影響を受けて、イヌとその飼い主が同調したという結果が得られている。また、イヌはヒトの情動を識別できることで知られており、ヒトに共感を示す能力があると以前から予想されていた。ヒトとヒト以外の動物両方の研究において、知覚したストレスが参加個体の認知に有意に影響していることが示唆されているため、これらの結果をもとに、本研究では、飼い主の情動はイヌに伝染し、イヌのストレスに関連のある情動変化は記憶課題を使ってたどることができるという仮説をたてた。実験では、イヌの飼い主は、State Anxiety Inventory(状況不安と不安特性を測る心理テスト)と記憶課題に取り組んだあと、追加課題中に、ネガティブ(ストレスを受けた飼い主条件)かポジティブ(ストレスを受けなかった飼い主条件)な言葉かけによって、振り分けられた。飼い主が自己申告した不安の度合いは、振り分けによって、ストレスを受けた飼い主条件で有意に上昇した。また、ふりわけが飼い主とイヌの記憶課題の成績に与える効果についても測定し 、その結果は、最初の実験でストレスを喚起したことで、飼い主の記憶課題の成績を向上させたことを裏付けるものだった。飼い主とイヌを分離させたあと(ストレスを受けたイヌ条件)、イヌも空間ワーキングメモリー課題で良い成績を見せた。さらに興味深いことに、課題の達成は飼い主のストレスの程度のふりわけに影響を受けていた。これらの結果は、イヌと飼い主間の情動伝染があるという考えをさらに支持するものであり、記憶課題の成績の変化を測定することによって、伝染が引き起こすイヌのストレスレベルの変化の指標として役立つと考えられる。(上田)

開講日 | 2017年11月08日 14:45-18:00 場所 | E304