Seminar

論文紹介(上田・須山)

Emotional contagion : Dogs and humans show a similar physiological response to human infant crying
(情動伝染:イヌとヒトはヒトの幼児の泣きに対して類似した生理的反応を示す)
Yong,MH.& Ruffman,T.(2014) Behavioural Processes, 108, 155-165

ヒトは、コルチゾール濃度と警戒心の増加を伴って、幼児の泣きに反応する。この反応は、共感の原型である情動伝染として解釈される。しかし、イヌがヒトの苦痛に対して同様に反応するかどうかを調べた研究については、一貫した結果が得られていない。本研究では、ヒトと長い間提携してきた飼犬が情動伝染の徴候を示すかどうか、3つの聴覚刺激(ヒトの幼児の泣き声・ヒトの幼児の喋り声・コンピュータ生成のホワイトノイズ)のうち1つに対するイヌ(75匹)とヒト(74人)の反応を実験して調べた。喋り声とノイズは統制条件として用いた。泣き声を聞いたあとのみ、ヒトとイヌの両方のコルチゾール濃度が基準値から有意に上昇した。さらにイヌは、従順さを警戒心と組み合わせるという、泣きに対する特有の行動反応を示した。これらの発見は、イヌがヒトの幼児の泣きに対する反応において情動伝染を経験したことを示唆し、異種間における共感の原型を示す明確な証拠を初めて提供した。(上田)

The learning of action sequences through social transmission
(社会伝達による行動順序の学習)
Whalen, A., Cownden, D., & Laland, K. (2015). Animal Cognition, 18(5), 1093-1103

社会学習のみですべての行動の順序を学習できないことが、過去の動物を対象とした社会学習の研究で明らかになってきた。基礎的な行動のみの組み合わせであったとしても、社会学習のみで順序を学習することは困難である。にも関わらず、複数の霊長類は自然の中で順序を学習することが知られている。本研究では、個人学習との組み合わせが順序学習にどのような影響を与えるか検討した。ここでは、一般的な強化学習のモデルである時間的差分学習 (temporal difference learning) を使用して社会学習と個人学習の合成を表現した。また、ここではマルコフ連鎖をさらに導入した。また今回ではゴリラの nettle processing をベースにモデルを構築。シミュレーションの結果、シンプルな社会学習メカニズムであっても、個人学習の情報と社会学習の情報をうまく合成することで、順序行動を学習できることが示された。また、社会学習の有用性は順序の複雑性や基礎的な行動が増えるほど高くなることが予測された。(須山)

開講日 | 2017年01月11日 14:45-18:00 場所 | E304