2016年度後期ゼミスケジュール
①瀧本ゼミ研究費の使い方(特に旅費支給のルール明確化に向けて)
②発表(論文紹介)順の希望調査(3年生、院生さん、できれば4年生も)
③上田さん・小原くんによる論文紹介
Assessing positive emotional states in dogs using heart rate and heart rate variability.
(イヌにおける心拍数と心拍変動を用いたポジティブな情動状態の評定)
Zupan, M., Buskas, J., Altimiras, J., & Keeling, L. J. (2015).
Physiology & Behavior, 155, , 102–111
多くの動物種は感情や知覚能力を持っていると認識されてきた。そのため、情動状態は動物における福祉のよい指標となるかもしれない。本研究の目的は、研究犬の9頭のビーグルの環境を操作して、様々な情動的な経験を示す生理的反応を明らかにすることであった。刺激には、ポジティブな程度が高いまたは低い食べ物(ミートボールかペレット)と、社会的報酬(親しい人かあまり親しくない人)が選ばれた。すべての刺激がポジティブであり、異なる報酬価値があるということは、滑走路動機づけテストで確認された。実験は、それぞれのイヌが、シャッターを上げると異なる刺激を見せることができるディスプレイシアターに面して立っている間に行われた。イヌは、自発的に接近したりとどまったりすることができた。4つの刺激それぞれに対し、4セッション(それぞれ20秒)の実験を行った。実験セッションは、4つの呈示段階で構成された(1回目の刺激の暴露、暴露後、2回目の暴露、報酬の獲得)。心拍数(HR)と心拍変動(HRV)反応は、実験室で実験を受けている間と、静かでよく知っている部屋で横になって休んでいる時に記録された。短時間のHRV測定に関する「スティッチング」という新しい方法も合わせて分析に用いた。異なる刺激に対するイヌの反応を実験している際、心拍数と低周波においては明確な違いは観察されることはなかった。つまり、交感神経緊張を伴う高周波比率(HF)(低周波と高周波の領域における相対電力)が、すべての刺激に対して同様に活性化したのである。これは、イヌがポジティブな覚醒状態にあるということを示唆しているかもしれない。HFの減少はペレットと比較してミートボール刺激とより関連していた。また、前の段階(人または食物を見る)と比較して、報酬段階(人と交流するか、食物を食べる)はHFとRMSSD(連続して隣接するRR間隔の差の2乗の平均値の平方根)の減少と関連していた。これは、イヌにおいて副交感神経処理がよりポジティブな情動状態と関係しているということを示唆している。HFとRMSSDの減少は、休息状況と比較して実験状況で見られた。このことは、姿勢の変更、すなわち、横たわっているのに対して立っている際に期待される、交感神経の活性化と副交感神経の機能低下に関連した自律神経系への作用と一致する。しかし、実験状況ではイヌは常に立っていたため、よりポジティブな刺激に応じる副交感神経処理については説明することができない。我々は、増加したHRとLF:HF比率が情動的な覚醒と関連しているということを支持する反応の体系的パターンを議論する。同時に、個体がすでにポジティブな精神状態にいるときでも、RMSSDとHFの複合的な減少がよりポジティブに調整された情動状態を反映するかもしれないという新しい提案を加える。(上田)
Gaze-following behind barriers in domestic dogs
(飼い犬による、障害物の後ろへの視線追従)
Met, A., Miklósi, Á., & Lakatos, G. (2014).
Animal Cognition, 17, 1401-1405
視線追従能力は、幅広い種で見られることが証明されてきた。しかし、イヌにおいてははっきりとした証拠がまだない。本研究では、イヌが不透明な障害物の後ろに向けられたヒトの視線を追いかけるかを調べた。その際、2つの状況を用意した。それは、食べ物がある条件と食べ物がない条件であった。われわれは、イヌが自発的にヒトの視線を追従し、食べ物がある条件ではイヌの視線追従がより促進されると予測した。なぜなら、イヌは、食べ物のある条件では、部屋のどこかに食べ物が隠されていることや、実験者がその場所を伝えてくれるかもしれないことを期待すると考えられるからである。おそらく、このイヌの期待は、彼らの動機状態や注意状態にポジティブな効果をもたらすだろう。ここで、われわれはイヌが両方の条件において不透明な障害物の後ろに向けられたヒトの視線を追従することを報告する。われわれの発見によると、イヌは、食べ物の有無にかかわらず、ヒトが視線を向けた障害物を早く注視した。しかし、われわれの予測したように、食べ物の有無はまたイヌの視線追従行動にある影響を与えた。食べ物があるときに、より多くのイヌが、ヒトが視線を向けた障害物を見つめたのである。本研究の結果は、視線追従が哺乳類に特有の能力であり、食べ物があるときのような機能的な文脈においてより容易に見られるのかもしれないという考えを支持する。(小原)
開講日 | 2016年10月12日 14:45-18:00 場所 | E304