Seminar

後期ゼミ10回目 論文紹介(佐藤・野村)

論文紹介(佐藤・野村)

Dogs catch human yawns
(イヌはヒトのあくびを受け取る)
Joly-Mascheroni, R.M., Senju, A., and Shepherd, A. J. (2008)
Biology Letters, 4, 446-448.

本研究はヒトのあくびがイヌ(Canis familiaris)に伝染する可能性があることを初めて実証するものである。29個体のイヌはヒトのあくびまたは統制された口の動きを観察した。ヒトのあくびを観察したときに21個体はあくびをしたが、統制された口の動きは、あくび誘発しなかった。イヌのあくびの伝染の存在は、この現象が霊長類に特有のものではないことを示し、イヌが共感の基礎の能力を有することを示す可能性がある。あくびは覚醒のレベルを調節することが知られているので、あくびの伝染はイヌと人の相互作用とコミュニケーションの調整を助ける可能性がある。ヒトとイヌのあくびの伝染の機能だけでなくメカニズムを理解することは、より詳細な研究を必要とする。(佐藤)

Contrafreeloading in Grizzly Bears: Implications for Captive Foraging Enrichment
(ハイイログマにおけるコントラフリーローディング: 飼育動物の採餌エンリッチメントへの影響)
McGowan, R. T. S., Robbins, C. T., Alldredge, J. R., and Newberry, R. C. (2010)
Zoo Biology, 29, 484-502.

飼育動物の健康を保つために、伝統的な給餌方法は生理学的ニーズを満たすことに焦点を当てていたが、近年は給餌の非栄養学的側面も強調されている。採餌行動を多様化するためのものを用いることは動物園で一般的であるが、バランスのとれた食事にプラスして選択的採餌を行わせることは栄養不均衡につながる可能性がある。その代替案として、一つにcontrafreeloadingパラダイムにおいてバランスのとれた食事を提供することが挙げられる。Contrafreeloadingは動物が同一のものを自由に利用可能であるときに敢えて努力が必要な方を選択するときに起こる。Contrafreeloadingと、採餌エンリッチメントとなるための論理的基盤を調べるために、捕らえられたグリズリー(ハイイログマ)を用いて2つの実験を行った。実験1では、2つのレベルの食事制限の状況下で、5種類のエサ(リンゴ・氷で包まれたリンゴ・サーモン・氷に包まれたサーモン・ただの氷)が同時に提示された。この場合、消費したearned-foodの重量とearned-foodのために働いている時間という、2つの方法でのcontrafreeloadingが考えられた。実験2では、食事制限下のクマに同時に3種類の選択肢(リンゴ・箱の中のリンゴ・空箱)を与えた。クマはEarned-foodよりもfree-foodの方を多く食べたが、5個体で箱を操作する時間により多くの時間を費やしていた。この結果は捕らえられた動物で採餌エンリッチメント戦略としてcontrafreeloadingの機会を提供することが有効であることを支持する。(野村)

開講日 | 2015年12月22日 4限 場所 | E304