Seminar

文献紹介(三代澤)、研究相談(砂後谷)

3年生の三代澤さんが文献紹介、4年生の砂後谷さんが研究相談を行いました

紹介文献

Mandrill mothers associate with infants who look like their own offspring using phenotype matching. マンドリルの母親は表現型照合によって自分の子どもに似た顔の乳児と関わる
Charpentier, M. J. E., Poirotte, C., Roura-Torres, B., Amblard-Rambert, P., Willaume, E., Kappeler, P. M., Rousset, F., & Renoult, J. P.
eLife 2022, 11, e79417.
https://doi.org/10.7554/eLife.79417

Abstract
血縁個体を行動的に識別することは、動物の社会的関係を形成するうえで重要な過程である。本研究では、表現型照合(phenotype matching)という仕組みを介して、第三者が非血縁個体を識別することを示す証拠を提示する。
マンドリルでは、私たちは最近、父方の血縁関係にある幼体および成体のメス同士で顔の類似性が高いことを明らかにし、父系血縁者を認識するための適応的な可能性を示した。本研究では、マンドリルの母親が、自身の子どもと他の幼体との顔の類似性を利用して、自分の子どもの社会的な交流機会を、より似た顔をもつ幼体へと導いているという仮説を立てた。
野生のマンドリル幼体80頭を対象に、まずディープラーニングを用いた顔認識技術によって解析を行った。その結果、父親を同じくする幼体同士は、年齢・性別・母親の違いとは無関係に、互いに最も顔が似ていることが示され、これまでの知見が最も若い年齢層にも当てはまることが確認された。
次に、長期にわたる行動観察データを用いて個体間の近接・集合パターンを解析し、母系の出自、母系血縁度、幼体の年齢および性別を統制した。その結果、予測どおり、母親は自分の子どもとより顔が似ている幼体の近くに位置する傾向があり、この母親の行動によって、顔の似た幼体同士が空間的に近くで過ごすようになることが明らかになった。
さらに、この結果を説明するさまざまな可能性について検討し、母親による適応的な行動が最も妥当な説明であると論じた。この仕組みを支持するため、理論モデルを用いて、母親が父系血縁のある幼体同士の縁故的行動(nepotism)を促進することで、自身の適応度上の利益を得るという進化的過程を示した。
私たちはこのメカニズムを「二次的血縁淘汰(second-order kin selection)」と呼ぶ。この概念は母子間相互作用にとどまらず、ヒトを含む他の社会性動物において、血縁関係のない個体間でみられる協力行動を説明する可能性をもつ。

(三代澤)


開講日 | 2026年07月15日 13:00~16:15 場所 | E304