論文紹介(藤田・塚原)
4年生の藤田さんと3年生の塚原さんが論文紹介をしました。
Dogs avoid people who behave negatively to their owner: third-party affective evaluation.
犬は飼い主に否定的な態度をとる人を避ける:第三者による感情評価
Hitomi Chijiiwa, Hika Kuroshima, Yusuke Hori, James R. Anderson, Kazuo Fujita(2015).Animal Behaviour Volume 106 Pages 123–127
doi:10.1016/j.anbehav.2015.05.018
要旨
イヌはヒトの社会的信号にきわめて敏感である。例えばイヌは、だまそうとする人物の指示に、すぐに 従わなくなる(Takaoka, Maeda, Hori, & Fujita, 2015)。もちろんこれは、そうすることでイヌ自身が利益を 手にすることを背景にした行動である。今回我々は、イヌが、自身の利益には直接関係しない場面で、他 者をどのように評価するのかを調べた。イヌの前で3人の人物が演技をした。中央に座る飼い主は、イヌ にとって価値のない物体を入れた透明の箱のフタを開けようとした。なかなか開けることができず、一方 の端に座る人物(応答者)に箱を差し出して援助を求めた。援助条件では、応答者は箱を支えて援助し、 その結果飼い主はフタを開けて物体を取り出すことができた。援助拒否条件では、応答者は顔をそむけて 援助を拒否した。飼い主はフタを開けることができなかった。統制条件では、飼い主は援助を求めること はせず、しばらく手を止めた。その間応答者は理由もなく顔をそむけた。飼い主はこの場合にもフタを開 けることはできなかった。いずれの場合にも反対側に座っている人物(中立者)は何もしなかった。演技 終了後、応答者と中立者は手のひらにおやつを載せてイヌに差し出した。援助条件と統制条件ではイヌは でたらめに人物を選んだが、援助拒否条件では、高頻度に応答者を避けて中立者からおやつを取った。つ まりイヌは、飼い主とのやり取りをする他者の値踏みをして、協力的でない場合にはその人物を避けるこ とがわかった。自身の利益につながらない場面で、イヌがこのように感情的な社会的評価をすることが、 今回初めて示された。(藤田)
Chimpanzee Cooperation Is Fast and Independent From Self-Control
チンパンジー
の協力は速く、自制心から独立している
Rosati, A. G., DiNicola, L. M., & Buckholtz, J. W. (2018).
Psychological Science,
29(11), 1832-1845.
doi:
10.1177/0956797618800042
要旨
大規模な協力は私たちの種の特徴であり、霊長類の中でも特異なようである。
しかし 、ヒトのような協力のパターンが出現した進化的なメカニズムは、まだ解明されていない。ヒトに最も近い近縁種である類人猿の協力行動の根底にある類人猿の認知プロセスを研究することは そのメカニズムを明らかにするのに役立つだろう。そこでわれわれは、40頭のチンパンジーを対象に、資源を提供したり、他人を助けたり、泥棒を罰したりする意思を評価するため、新しい複数の心理検査を用いた。その結果、チンパンジーは利己的な選択をするよりも向社会的な選択をする方が早いことがわかった。チンパンジーは利己的な選択よりも向社会的な選択をする方が早く、より向社会的な個体ほど反応が早いことがわかった。さらに、自制心の2つの尺度 は、向社会的な反応のばらつきを予測せず、協調的なタスクにおける個体成績は共分散しなかった。これらの結果は、チンパンジーとヒトは、協力行動の範囲に違いがあるにもかかわらず、協力のための重要な認知過程を共有していることを示している。(塚原)
開講日 | 2024年07月17日
13:00ー16:15
場所 | E304