Seminar

研究発表(山縣)・論文紹介(倉田)

心理学研究室 博士3年の山縣さんが研究発表をしました。また、3年生の倉田さんが論文発表をしました。

Secure base effect in former shelter dogs and other family dogs: Strangers do not provide security in a problem solving task.

Cimarelli G, Schindlbauer J, Pegger T, Wesian V, Virányi Z (2021) PLoS ONE 16(12): e0261790. 
 
要旨
イヌは飼い主に対してアタッチメント(愛着)における4つの基準を満たす行動パターンを示す。そのため、飼い主をセキュア・ベースとし、独りでいる時よりも飼い主と一緒にいる時の方が環境の探索や物の操作を行う。イヌにとって飼い主が他人よりもセキュア・ベースとして機能することが示めされる示唆はいくつかあったが、物を操作することにおいて、飼い主と他のヒトを差別化する証拠は明確ではない。本研究では、イヌとヒトを一組のパートナーとし、飼い主と見知らぬヒトがいる時(呼びかける・黙っているなどの行動変化も加えて検証;実験1)と飼い犬が独りでいる時(実験2)を物を操作する課題を用いて検証した。さらに、飼い主と見知らぬヒトの間に存在し得る違いのメカニズムをより深く洞察するために、イヌの以前の生活環境(子犬の頃から同じ家庭で暮らしていたか、シェルター・保護施設での生活経験があるかなど)による影響を検証した。その結果、見知らぬヒトはセキュア・ベースとして機能しないこと、元保護犬は飼い主と見知らぬヒトへの差別化を飼い犬よりも強く示すことがわかった。元保護犬は新しい環境や見知らぬヒトへの不安と相関する行動を多く示すことから、保護犬が家庭環境で飼育されることは、必ずしも新しい飼い主と安定した絆を築くことに影響するとはいえないが、イヌが見知らぬヒトのような新しい刺激とどのように相互作用するかに影響を与える可能性があると結論づけられた。これらの結果は、飼い主がイヌに安心感を与える特異的な役割を担っていることを確認するものであり、元保護犬の絆形成に実用的な示唆を与えるものであった。(倉田)

開講日 | 2024年07月24日 13:00ー16:15 場所 | E304