論文紹介(小野・和田)
自主ゼミ1回目では、学部4年の小野さんと和田さんが論文紹介をしました。
Functionally relevant responses to human facial expressions of emotion in the domestic horse (Equus caballus)
「家畜ウマ(Equus caballus)における、ヒトの顔の表情に含まれる情動への機能的な関連反応」
Smith, A. V., Proops, L., Grounds, K., Wathan, J., & McComb, K. (2016). Biology letters, 12(2), DOI: https://doi.org/10.1098/rsbl.2015.0907
ヒト以外の動物が、情動含むヒトの信号を認識できるかどうかは、科学的かつ適応的な重要性をもっており、また特に家畜化されている種と関連している。本研究は、写真におけるヒトの顔のポジティブな(幸せそうな)表情とネガティブ(怒っている)な表情を自然に識別するという馬の能力を初めて明らかにした。本研究は、怒っている顔が刺激に対する機能的理解を示す反応を誘発したことを示した:ウマは左側の凝視バイアス(一般的にネガティブとみなされる刺激と関連している)を見せ、これらの写真と向かい合った時に心拍(HR)が早くなった。そのようなヒトの情動に対する偏視的な反応は、これまではイヌにおいてのみしか記録されておらず、心拍における顔の表情の影響はいかなる異種特異的な研究でも示されていない。これらの発見が種間のコミュニケーションに提供する識見とともに、それらは種間の情動的な表現と知覚における一般性と適応性について興味深い質問を投げかけている。(小野)
Domestic horses (Equus caballus) discriminate between negative and positive human nonverbal vocalizations
「家畜ウマはヒトのネガティブおよびポジティブな非言語的音声を弁別する」
Smith, A. V., Proops, L., Grounds, K., Wathan, J., Scott, S. K., & McComb, K. (2018). Scientific reports, 8(1), 1-8. DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-018-30777-z
音声シグナルから感情を弁別する能力は社会的な種において特に適応的である。家畜化された種にとっては、ヒトの音声シグナルを弁別することも同様に適応的であるだろう。本研究では、ウマがヒトのネガティブおよびポジティブな非言語的な音声に対して機能的に意味のある方法で自然に反応するかどうかを検討するプレイバック実験を実施した。ウマに対して、ほかの感情に関する手掛かりが欠けた状態でポジティブおよびネガティブな情動価をもつヒトの音声(笑い声と唸り声)を呈示した。参加個体はポジティブな音声を聞いたときに比べ、ネガティブな音声を聞いた直後に動きを止める行動を有意に長く見せ、これによりネガティブな音声により、脅威に気が付きやすいように、警戒行動が促進されたことが示唆された。参加個体がネガティブな音声に対する反応として長い時間耳を前方に向け、耳の動きが少なかったことも警戒の高まりを示唆しており、この解釈を支持している。さらに、参加個体はネガティブな音声に比べてポジティブな音声に対して右耳・左半球のバイアスを示し、これは参加個体が唸り声よりも笑い声をポジティブに処理したことを示唆している。これらの発見により、普遍的な音声の感情弁別がおこなわれている可能性と、異種間のコミュニケーションに対する学習とそれ以外の機能の役割についての興味深い疑問が生じる。(和田)
開講日 | 2020年05月14日