論文紹介(中田)・「身体性」に関する研究動向紹介(山縣)
竹澤ゼミM2の中田くんが論文紹介を、小川ゼミD2の山縣さんが「身体性」に関する研究動向の紹介をしてくれました。
How do horses (Equus caballus) learn from observing human action?
「ウマはどのようにヒトから行動を学ぶのか?」
Bernauer, K., Kollross, H., Schuetz, A., Farmer, K., & Krueger, K. (2019).
Animal cognition, 1-9.
https://doi.org/10.1007/s10071-019-01310-0
これまでの研究において、ウマはヒトから観察学習が可能なことは示されてきたが、社会的学習のメカニズムは十分に説明されていない。本研究では、ボタンを押して餌箱を開ける方法の教示として、4種類の異なる方法を用いた。 本研究では3〜12歳の68頭のウマを対象とした。63頭のウマが馴化フェイズをパスし、Hand Demo (N = 13; ひざまずいたヒトが手を使う)、Head Demo (N = 13; ひざまずいたヒトが頭を使う)、Mixed Demo (N = 12; しゃがんだヒトが頭と手の両方を使う)、Foot Demo (N =12; 立ったヒトが足を使う)、No Demo (N = 13; 教示なし) の5群に分れられた。 44頭のウマが学習基準(20回連続して餌箱を開ける)に達した。そのうち40頭はデモありグループの75%、4頭はデモなしグループの31%だった。学習基準に達しなかったウマは、他の個体よりもヒト実験者に頻繁に接近していた。多くのウマが、デモの条件に関わらず、頭を使ってボタンを押していた。しかし、Foot Demoグループでは、4頭のウマが常に足を使い、2頭は足と頭を使っていた。Mixed Demoを行うと、ウマの行動はより多様になった。実験の結果、ヒトから社会的学習をするとき、行動をコピーするウマはごく少数であることが示された。数頭は、教示された行動に合わせているようで、観察条件づけ (observational conditioning) を行ったのかもしれない。一方、ほとんどのウマは、ヒトを介した社会的強化 (social enhancement) によって、行動を調節する必要な側面を学習し、さらに試行錯誤を行うことで餌箱を開けられるようになっていた。(中田)
研究紹介予告
近年,ヒトを対象とした認知科学の一部領域では,「身体性」に(再び?)注目が寄せられ,身体をベースに自己・他者・心などについて考えてみようという動きが(発表者がみる限りでは)盛んになってきたように思われる。
今回の発表では,まず身体性に着目したヒトの認知科学研究の近年の動向を紹介する。続いて,類似のテーマについて同様のパラダイムを用いて検討している動物研究や,身体性に関わる考え方を議論に取り入れている動物研究について触れる。これらを踏まえ,「からだ」という視点から動物の「こころ」についての議論を試みる。(山縣)
開講日 | 2019年10月16日
14:45~18:00
場所 | E304