Seminar

論文紹介(小野・吉岡)

3年生の小野さんと吉岡くんが論文紹介してくれました。

The eyes and ears are visible indicators of attention in domestic horses
「飼育下にあるウマにおいて目と耳は注意の視覚的指標である」
Wathan, J., & McComb, K. (2014). Current Biology, 24(15), R677-R679.
https://doi.org/10.1016/j.cub.2014.06.023

他者の注意の状態への敏感さは適応的な利点を持つ。また、社会的動物において、他者に注意を向けることは、通常の社会的機能やさらに複雑な社会的認知能力と同様に、捕食者の探知にも重要である。社会的な種がどのようにして他者の注意を認知しているのかという点に関心が寄せられているにも関わらず、ヒト以外の動物の研究は、それに関する詳細で決定的な手掛かりをつかめていない。多くの哺乳類が視覚的な注意の手がかりとして目立つ可動性のある耳を持つという事実が見過ごされ、これまでの研究では頭と目の方向に焦点を当ててきていた。本研究では、ウマが餌の位置を突き止めるために同種の頭の向きを利用していることや、顔の一部(目・耳)が覆われているときはこの能力が抑制されることを示す。この注意を正確に判断する能力はまた、モデルとなったウマの同一性と相互に影響しあっており、顔の特徴における個々の違いは手がかりの顕著性に影響するかもしれないということを示唆している。本研究は、頭の向きと顔の表情(特に目と耳の両方を含む)の組み合わせが、社会的な注意を伝えるのに必要であることを示している。ヒト以外の動物において、注意がどのように伝達されているのかを理解するために、広い範囲の手がかりを考慮することが必要不可欠であることを、本研究の発見は強調している。(小野)

 
Preference for human direct gaze in infant chimpanzees (Pan troglodytes)
「チンパンジーの幼児におけるヒトの直視に対する選好」
Myowa-Yamakoshi, M., Tomonaga, M., Tanaka, M., & Matsuzawa, T. (2003). Cognition, 89(2), 113-124.
 
私たちは、10週齢から32週齢のチンパンジーの乳児3頭における視線知覚について、2選択選好知覚パラダイムを用いて研究した。チンパンジーの乳児は、2枚のヒトの顔写真(a)目が開いている、または閉じている(b)直視している、または視線をそらしている を呈示された。本研究では、チンパンジーの乳児は、自分を直視しているヒトの顔写真をより好むことが分かった。しかしながら、顔のパーツを混在させた配置パターンの刺激に対しては、直視しているものと視線をそらしているものとの間に明確な選好の違いは見られなかった。これらの知見から、視線知覚は表情の周辺状況に影響を受けることが分かった。視線知覚と表情処理、そして視線知覚の適応的意義との関係については進化的な視点から考察している。(吉岡)

開講日 | 2019年10月09日 14:45~18:00 場所 | E304