論文紹介 (井上・明日香)
Synchronous diving behavior of Adelie penguins
「アデリーペンギンの同調潜水行動」
Takahashi, A., Sato, K., Nishikawa, J., Watanuki, Y., & Naito, Y. (2004). Journal of Ethology, 22(1), 5-11.
https://doi.org/10.1007/s10164-003-0111-1
同種との同調行動は、
Deer Mothers Are Sensitive to Infant Distress Vocalizations of Diverse Mammalian Species
「シカの母親は様々な哺乳類幼児の苦痛な鳴き声に対して敏感に反応する」
Lingle, S., & Riede, T. (2014). The American Naturalist, 184(4), 510-522.
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/677677
子どもの苦痛な鳴き声(泣き声)に対する聴覚構造、行動コンテキスト、親の反応は、ヒトを含む哺乳類において類似している。これらの類似点によって、動物は分類学的および生態学的に遠い種の苦痛な鳴き声に反応できるのか。著者らは、ミュールジカ(Odocoileus hemionus)とオジロシカ(Odocoileus virginianus) の母親に対して、モルモット(Marmota flaviventris)、オーストラリアアシカ(Neophoca cinerea)アナンキョクオットセイ(Arctocephalus tropicalis)、ネコ(Felis catus)、コウモリ(Lasionycteris noctivagans)、ヒト(Homo sapiens)、その他の動物の幼児が発する苦痛な鳴き声をスピーカーを使って聞かせた。シカは、それらの苦痛な鳴き声の基本周波数(F0)が、自己の幼児に応答する周波数の範囲内に入っていた場合(もしくは範囲内に入るように操作された場合)には、スピーカーに対して接近行動を示した。一方で、捕食者の鳴き声や、コントロール(制御)音に対しては接近行動を示さなかった。著者らの結果は、親とのコミュニケーションに必要な幼児の苦痛な鳴き声の音声的特徴、およびその音声的特徴に対する親の感受性は、様々な哺乳類の間で共有されていることを示唆している。(明日香)
開講日 | 2018年10月10日 場所 | E304