HOME > 研究テーマ

研究テーマ

ゼミの研究紹介はこちら

社会的ジレンマにおける協力の問題

社会的ジレンマにおける協力の問題

人は協力するのが当たり前でしょうか? 困っている人を見たら助けるのは当たり前でしょうか?

ゲーム理論(*)では、お互いに協力しない方が得な状況を定義し、理論的なモデルを作ってきました。 それに対して、社会心理学などの分野では、実験によって、理論的には協力しない方が得になる状況でも 協力する人が相当割合存在することを示してきました。
私たちの研究室では、どのような状況で協力しやすいのか、あるいはしにくいのかについてゲーム実験やゲーミング&シミュレーションなどを用いて調べています。また、環境問題を中心に、現実の社会でどのように社会的ジレンマの問題が解かれているのかについて、事例調査や社会調査を通じて明らかにしています。
現実社会における社会的ジレンマの解決には、1) 社会全体にとって望ましい姿を、抽象的な理念ではなく、日常生活時間の範囲で具体的に実現可能なものとして表現できること、2) その近い将来のイメージが多くの人の間で共有できていること、 3) それを実現するためのルール変更の決定に至るプロセスが公正だと誰もが判断でき納得できること、の3点が重要であるという仮説を実証的に検証しています(Pruit & Kimmel [1977]; Yamagishi [1986]などの「目標期待理論」を発展させています)。

▲ページの先頭へ

手続き的公正を高める決定プロセスのあり方について

手続き的公正を高める決定プロセスのあり方について

同じ結果であれば、そこに至るまでのプロセスの違いは、あまり重要ではなさそうな気がします。同じルールができるのならば、どう決めようとルールはルールです。
ところが、実際には、決定に至るまでのプロセスが公正だったかどうかによって、そのルールを受け入れるかどうかが異なることが知られています。例えば、環境計画づくりやごみの収集方法を変更するときなどに、多くの市民の意見を聞いて決めたか、透明性は高かったか、そうでないかによって、決められたルールを納得できるかどうかが全く異なります。
特に、環境に関する問題ではどれだけ立派な計画ができたとしても、多くの人々が納得でき、 それを行動に移せなければ“絵に描いた餅”になってしまいます。そのために「手続き的公正」を高めるような決め方が重要なのです。
私たちの研究室では、市民参加による計画づくりなどの事例調査や集団意思決定の実験を通じて、手続き的公正を高める要件について検討しています。

▲ページの先頭へ

リスクと信頼をめぐって

リスクと信頼をめぐって

私たちの日常生活はリスクでいっぱいです。しかし、個別の専門的な内容についてすべて理解することはとても困難です。
例えば、ごみ問題一つとっても、廃棄物がどう焼却されるのか、そこで用いられる大気汚染防止やダイオキシンを出さない技術については、専門家でない限り一般の人々はよく知らないでしょう。ふだんは、それぞれの専門家を信頼できるためあまり気にしすぎずに日常生活を送ることができるのですが、ひとたび信頼を損なうような出来事が生じると、突如として不安になります。政策決定の場面では、行政などの主体に十分な信頼がなければ、どれだけ優れた施策も認められないでしょう。
私たちの研究室では、信頼を損なったときにどうすれば信頼を回復できるのかについて、リスクコミュニケーションと手続き的公正の観点から、シナリオ実験や集団実験、役割演技型ゲーミング、社会調査などを通じてアプローチしています。
最近の研究では、複数のステークホルダー(主体)が対立している状況で、どのステークホルダーへの信頼も低い場合には、とくに手続き的公正の要件を満たす決め方がいっそう重要であることが明らかになりつつあります。

▲ページの先頭へ

環境配慮行動

環境配慮行動

多くの人は環境にやさしくとの態度はあるものの、そのすべての人が実際に環境に配慮した行動をしているわけではありません。環境配慮行動を巡る態度と行動のギャップについては多くの研究がなされてきました(参考:広瀬幸雄編著『環境行動の社会心理学』(北大路書房))。
しかし、日本では、現場での介入実験やアクションリサーチの事例がまだまだ少なく、多くの成功・失敗事例を集める必要があります。また、心理学の研究としても、習慣や社会規範といった古くからある問題について、いまだに未解明な問題が拡がっています。短期的な実験室実験だけでは、本当の意味でこれらの効果を検証できたとは言えないからです。
私たちの研究室では、このような難しい課題に挑戦しています。実際に、ごみの適正な分別排出、レジ袋削減、 マイボトル持参、省エネ行動促進などの社会実験を手がけてきました。長期に渡ってその影響過程を追い続けることではじめて見える知見があり、日々現実と向き合うことで、環境問題の解決に向けた実証的な研究を目指しています。