21世紀COE 「心の文化・生態学的基盤に関する研究拠点」
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『現代文化人類学の課題――北方研究から見る』

煎本孝・山岸俊男編 (世界思想社から刊行予定)

本書のねらいと特徴

日本における北方文化研究は近世以来の長い歴史の上に独自の変遷と展開をとげてきた。研究対象はアイヌ文化から広く北方ユーラシア、日本、北アメリカを含む北方周極地域諸文化へと展開し、研究方法も民俗学・民族学から自然と文化の人類学――自然誌――へと変遷し、さらに研究目的も、日本人と日本文化の起源を明らかにすることから、「人間とは何か」という人類学の普遍的課題の解明へと変化してきた。

とりわけ、20世紀後半のソヴィエト連邦の解体を伴うペレストロイカなどに見られるような、世界規模での急激な政治的・経済的変化、その結果としての民族間・宗教間の対立と紛争の激化の時代にあって、私たちは北方研究を通して北方文化独自の課題のみならず、人類に共通する課題に直面する。北方文化を語ることは、もはや地域に限定された課題を語ることを越えて、そこからみえる理論的展開、研究の社会的役割、地球環境問題と開発、歴史性、伝統の再構築など、現代文化人類学の課題を語ることなのである。

本書は、本COEが協賛した日本文化人類学会第39回大会の特別シンポジウム「北方研究からみえる人類学の今日的課題」の内容を元に、執筆者それぞれの視点から広く人間、社会、自然にかかわる課題について論じ、文化人類学の今後の展望を検討するために企画された。


目次

T 理論的展開

第1章 北方研究の展開

煎本孝(北海道大学大学院文学研究科教授)


第2章 心の文化・生態学的基盤

山岸俊男(北海道大学大学院文学研究科教授)

 

U 研究の社会的役割

第3章 研究の社会性、人道性について

加藤忠(社団法人北海道ウタリ協会理事長)


第4章 アイヌ・北方文化研究と北海道大学の役割

中村睦男(北海道大学総長)

 

V 地球環境問題と開発

第5章 チュクチ研究からみた人類の生態と地球環境問題

池谷和信(国立民族学博物館助教授)

第6章 北方先住民と開発――カナダ・イヌイットの場合

岸上伸啓(国立民族学博物館助教授)

 

W 歴史性

第7章 ポスト社会主義時代の北方人類学研究

佐々木史郎(国立民族学博物館教授)

 

X 伝統の再構築

第8章 アイヌ語研究の課題と展望

佐藤知己(北海道大学大学院文学研究科助教授)

第9章 文化復興から読む宗教と自然の意味――ハンティ、サハの事例から 

山田孝子(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)



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