Seminar

論文紹介(高倉・中田)

Cross-modal recognition of human individuals in domestic horses (Equus caballus)
「家畜ウマによるヒトのクロスモーダル認識」
Lampe, J.F., & Andre, J. (2012) Animal Cognition, 15, 623-630.
DOI: 10.1007/s10071-012-0490-1

本研究は、ウマがよく知っているヒトをクロスモーダルに認識することができることを示した。ウマは、よく知っている人を見たり嗅いだりしなくても、声を聞くだけで、知らない人と区別することができたのである。逆に、ウマは視覚的・嗅覚的手がかりだけを呈示されたとき、その声を同時に聞かなくても、ヒトを認識することができた。本実験では、以下のようなクロスモーダルの期待違反法の設定を用いた。参加個体は、聴覚的手がかりと視覚的・嗅覚的な手がかりが同じ人のものでない不一致試行と同じ人のものである一致試行の両方に参加した。参加個体は、不一致試行において、より素早く長く頻繁に反応して、その手がかりに対する興味を強く示した。これは、ウマの脳では、1つまたは2つの感覚が奪われてもよく知っている人の認識を維持することができるように、その人を聴覚と視覚・嗅覚を統合して認識する仕組みになっていることを示唆している。(高倉)

 

The evolution of teaching
「教育の進化」
Thornton, A. & Raihani, N. (2008) Animal Behaviour, 75, 1823-1836.
doi.org/10.1016/j.anbehav.2007.12.014

幅広いトピックに関連するにもかかわらず、動物行動学において教育は軽視されてきた。最近のヒト以外の動物における教育のエビデンスに照らして、教育が進化する状況について研究できるようになってきた。ここでは、教育を他人の学習を促進する協力行動の一形態として扱う進化論的視点で考察する。教育の重要な特徴を概説して、教育が進化するような淘汰圧について議論する。学習者が得られる長期的なベネフィットが教育者のコストを上回る場合にのみ教育は適応的であり、これらのベネフィットは教育無しでも学習者が学習できる容易さでスケールされる。この観点によって、教育の区分、それが取りうる形態、およびヒトと他の種の教育との関係を予測できるようになる。また、教育をどのように分類すべきかについて考察する。手続き的な情報の学習を促進するのか、あるいは宣言的な情報の学習を促進するのかによって、自然淘汰は異なる教育の形態を支持するようになることが示唆される。(中田)

開講日 | 2018年04月25日 15:15~18:00 場所 | E304