Seminar

論文紹介(谷藤・山口)

Social grouping and maternal behaviour in feral horses (Equus caballus): the influence of males on maternal protectiveness
(野生の馬における社会集団と母性行動:母性的保護におけるオスの影響)
Cameron. E, Linklater. W, Stafford. K, Minot. E. (2003) Behav Ecol Sociobiol 53:92–101

子供の怪我や死亡のリスクは母性的行動、特に保護(防衛)に影響する、雌馬は父系が不明確な、種馬が一頭いる群れまたは複数の種馬がいる群れにいる。本研究では群れのタイプとの関連における母性的行動について調べた。複数の種馬がいる群れの雌馬は子に対しより保護的になる。特に種馬と仔馬が互いにアプローチしたときにその傾向がよくみられる。種馬の仔馬への攻撃の割合は母性的保護を予測する指標となり、雌馬の保護性(防衛性)は引き続く年の繁殖の成功の減少と有意に相関している。群れのタイプを変えた、または実験的に群れのタイプが変わった、子のいる雌馬は種馬が一頭いる群れにいるより複数の種馬がいる群れにいるほうがより保護的だった。ウマは子殺しや堕胎が報告さ れており、有蹄類では珍しい動物である。子殺しも堕胎も父系が不明確なところで発生し、ウマの社会構造は子殺しが報告されている他の種とよく似ている。雌馬が引き続く年に高い繁殖成功を得られるため、種馬は子殺しで得をしているといえる。種馬の攻撃は子殺しのリスクのために雌馬の行動や母性的努力の重要な修飾因子となっているかもしれない。(谷藤)

北海道和種繁殖母馬のヒト許容距離と子馬のヒト許容距離の関係
(北海道大学 大学院農学研究院 生物資源科学専攻 納多春佳 H27年度修士論文)

ウマは古くから世界中で広く使役家畜として利用されており、より使役に適したウマ、つまりは人間に対する受容性が高く、人間との間に信頼関係を築ける個体が求められる。ウマの人間に対する受容性を測定し、定量化できるものとして、個体それぞれの社会空間があげられる。逃走距離(Flight distance : FD)は、ウマの親和性を示す距離であり、人間との接触を経験することで変化する。本研究では、人間に対する受容性の指標としてFDを用い、哺乳期間中から離乳後までの母子それぞれのFDを測定し、個体の行動特性と人間に対する受容性との関係を調べた。静内研究牧場の繁殖母子群の計96頭(48ペア)を被験体として、約6か月間の実験を2回行った。測定者と観察個体間の距離は距離計で測定した。また測定者が1歩ずつ観察個体へ近づき、観察個体が逃避反応を示す地点までの歩数を測定した。この測定者から観察個体までの距離から、逃避反応を示した地点までの歩数×歩幅で示される距離を引いて求められるものをFDと定めた。すると、離乳前および離乳後における母馬と子馬のFDの間には正の相関があり、FDに応じて受容性の高さを比較すると、母馬の人間に対する受容性は、子馬の人間に対する受容性に影響を与えることが示された。また、離乳とそれにともなう人間の接触により子馬のFDは小さくなることが分かった。このことから、3週間の人間による飼養管理が子馬の人間に対する受容性を高めた可能性が示唆された。(山口)

開講日 | 2017年02月01日 14:45-18:00 場所 | E304