Seminar

論文紹介(倉田・上河内)

3年生の倉田さんと3年生の上河内さんが論文紹介をしました。

Characterizing human–dog attachment relationships in foster and shelter environments as a potential mechanism for achieving mutual wellbeing and success
Thielke, L.E. & Udell, M.A.R. (2020) Animals, 10, 67. 
doi: 10.3390/ani10010067.
URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7023214/
 
要旨
本研究では、アニマルシェルターや里親の元で暮らすイヌとその一時的な養育者となるボランティア・里親ボランティアとの間になる愛着関係をそれぞれ検討した。また、これらの結果を過去に発表された飼い犬についてのデータも関連付けて検討した。結果、シェルターに住むイヌが安定愛着型である割合は飼い犬の先行研究のデータに比べ、有意的に低かった。里親の元で暮らすイヌと飼い犬の安定愛着型である割合は有意的な違いは見られなかった。里親のイヌとシェルターのイヌの間では、愛着スタイルの割合についての有意的な差は見られなかった。里親とシェルターのイヌには、不慣れ・慣れ親しんだ人に対する社会的反応の欠如と関連のある脱抑制性愛着障害の証拠も見つかった。本研究は、里親やシェルターという環境に愛着理論を当てはめた初めての研究である。(倉田)
 
人間との関わりの中で変化し続けるイエネコの社会的行動.
山根明弘 (2022). 心理学評論, 65, 317-322.
DOI: 10.24602/sjpr.65.3_317
 
要旨
最近の分子解析と考古学的証拠により、家猫(Felis silvestris catus)の祖先はアフリカヤマネコ(Felis silvestris lybica)であるという結論が導き出された。 人類とヤマネコとの関係、そしてヤマネコの家畜化は、およそ1万年前のメソポタミアで始まったと考えられている。 その後、猫は古代エジプトに持ち込まれ、そこで家畜化のプロセスが完了したと推測されている。 ヤマネコは人間を恐れないという特徴を獲得したため、2つの種は長い間共存することができた。 猫が太古の昔に獲得したもうひとつの特徴は、多数の他の猫との共同生活に対する耐性である。 この特徴は野良猫の社会システムや社会行動に影響を与えている。 ヤマネコは、多くのネコが餌を食べることができるように、餌資源が十分に集まっている状況下で、餌を食べるグループを形成する傾向がある。 集団生活を営むアフリカライオンに見られ、単独生活を営むヤマネコには見られない社会的行動には、オスネコによる同性愛行動、メスネコによる共同授乳、嬰児殺しを防ぐためのオスの育児などがある。 これらの行動のほとんどは、高密度な生活と関連して進化してきたと考えられる。 今後、家猫の行動は人間社会の連続的な影響を受けて変化し続けるだろう。(上河内)

開講日 | 2024年05月08日 13:00ー16:15 場所 | E304