Seminar

論文紹介(戸松・和田)・修論相談(上田)

3年生の戸松くんと和田さんが論文紹介、修士2年の上田さんが修士論文についての相談をおこないました。

A comparative analysis of the acoustic structure of separation calls of Mongolian wild horses(Equus ferus przewalskii) and domestic horses(Equus caballs)
「モウコノウマと家畜ウマにおける分離音声の音響構造の比較研究」
Alberghina, D., Caudullo, E., Bandi, N., & Panzera, M. (2014). Journal of Veterinary Behavior, 9(5), 254-257.
https://doi.org/10.1016/j.jveb.2014.04.008

ウマ科の動物では、仔ウマまたは母ウマが互いとの接触を図るとき、また種オスが他の集団メンバーとの接触を図るときに発された音声は親和的な音声に分類され、発声後に再会が生じた場合には分離音声として分類される。家畜化がウマ科の動物の発する音声に影響を与えた可能性を検討するため、同一の生息地に暮らすモウコノウマ、およびモンゴルの家畜ウマの発する分離音声を録音し、スペクトル解析を実施したうえで比較した。この2種の母ウマと仔ウマが発する分離音声について、音響的差異があった。特に、モウコノウマの母ウマが発した音声の第2および第3フォルマントが、モンゴルの家畜ウマのものよりも周波数が有意に高かった。一方、同じ音響変数がモウコノウマの仔ウマではモンゴルの家畜ウマの仔ウマよりも有意に低かった。第2および第3フォルマントは、モウコノウマとモンゴルの家畜ウマにおいて、母ウマと仔ウマの発する分離音声の弁別に明確な効果をもつ。音声の継続時間を除けば、種オスの発する音声については種間の音響パラメーターの有意な差はみられなかった。生物音響学的分析では、環境、進化、および社会組織の影響に基づきこの2種を区別することができる。(和田)

Maternal care and foal social relationships in a herd of Sorraia horses: Influence of maternal rank and experience
「母ウマのランクと経験がソーライア(Sorraia horses)の群れの母ウマの子育てと仔ウマの社会的関係に与える影響」
Heitor, F., & Vicente, L. (2008). Applied animal behaviour science, 113(1-3), 189-205.
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2007.11.005

母ウマのランクと経験が母ウマの子育てと仔ウマの社会的関係に与える影響をソーライアの群れで調査した。7頭の母ウマから生まれたオス6頭とメス7頭の計13頭の社会的接触と空間的な関係を、仔ウマの発達段階に必要な3つの主要な段階を含む生後0か月から生後10か月まで調べた。授乳の際の母ウマと仔ウマの間の争いは、通常は母ウマのランクと経験に影響しないが、高ランクの母ウマは低ランクの母ウマに比べ授乳を許容する割合が高かった。高ランクの母ウマの仔ウマは社会化の際により多くの時間を母ウマと近接して過ごした。母ウマのランクと経験の、母ウマの保護性と仔ウマの母ウマからの独立、仔ウマと群れのメンバーとの間の友好的な関係の発達に対する有意な影響は見られなかった。高ランクの母ウマの仔ウマは生後一か月までにほかのウマから攻撃を受ける頻度が少なかった。仔ウマの支配的な主に攻撃性と関連があり、母ウマのランクとの関連は見られなかった。母ウマの行動には大きな変動性があり、母ウマのランクと妊娠の際の体の状態との関連の欠如と、群れ内の固定的な社会環境も報告された結果を部分的に説明するだろう。(戸松)

開講日 | 2019年12月11日 14:45-18:00 場所 | E304