論文紹介(鎌谷)
Social relationships in a group of horses without a mature stallion
「成熟した種馬のいないウマの集団における社会的関係」
Snorrason, S., Sigurjónsdóttir, H., Thórhallsdóttir, A., & van Dierendonck, M. (2003). Behaviour, 140(6), 783-804.
DOI:https://doi.org/10.1163/156853903322370670
Abstract
1.成熟した種馬のいないアイスランディックホースの集団における、社会的関係性(social relationships)を検討した。ウマはお互いに親密であり、相互毛づくろいと遊びの関係、空間的近接、優位-劣位の関係そしてこれらの関係における血縁の影響が分析された。
2.社会的構造は明らかに大人メスの行動に影響を受けていた。ウマは社会的分類(sex/age)の範囲内で絆を形成することを好み、密接に近接をしていた。群は2つの社会的なサブグループに分けられ、大人メスが1つの集団、大人のセン馬とサブアダルトがもう一つの集団であった。後者の集団は相互毛づくろいと遊びに基づいた関係を形成していたが、大人メスは遊んではいなかった。性別の違いは明白であり、オスはメスよりも多く遊び、より多くの遊び相手がいて、遊び仲間としてもより人気であった。
3.攻撃率は低かった。社会的順位は線形である。大人メスは大人のセン馬・サブアダルト・仔馬よりも高く順位づけられる。順位は有意に年齢と相関していた。順位がより近い大人メスほど、よりお互いに毛づくろいを行っていた。このような関係はほかの社会的集団の中では見られなかった。
4.血縁は4あるいは5世代までさかのぼって計算された。毛づくろいと遊びの頻度と、近接は、すべて血縁と正の相関があった。社会的順位の近い大人メスは、遠い個体間同士よりも平均してより関連があった。
5.アイスランディックホースの群れにおける社会的関係性は、ある程度、成熟した種馬のいる管理されていない、半野生のウマの群れやバチェラーで報告されていることとは異なっていた。本研究の結果は、種馬のいない集団における大人メスは、より毛づくろいをしていた。さらに、自然なハレムにおいてよりも好んで相互作用をするパートナーを持っており、大人メスのパートナーはほかの大人メスであり、半野生の群れにおいて世話をしていると思われている離乳した子供ではなかった。サブアダルトもまた、種馬がいないときに、より社会的な活動をしているようであった。興味深いことに、アイスランディックホースの群れにおいては、大人メスは種馬のような行動や、マウンティングをするような行動、仔馬を守る行動を見せた。異なる構成のグループにおけるウマの行動と、関係の性質を研究することによってのみ、種の個体の社会的戦略と認知能力についての、包括的な理解を得ることができるだろう。このような知識は、ウマの管理様式や福祉において重要である。(鎌谷)
開講日 | 2019年04月10日 14:45~ 場所 | E304