Seminar

研究計画相談(上田)・論文紹介(鎌谷)

A review of the human–horse relationship.
「ヒトとウマの関係性のついて」
Hausberger, M., Roche, H., Henry, S., & Visser, E. K. (2008). Applied animal behaviour science, 109(1), 1-24.
DOI:https://doi.org/10.1016/j.applanim.2007.04.015

ヒトとウマの関係は長い歴史にもかかわらず、ウマに関連した出来事や事故は、ウマの専門家でも専門家でなくても生じる。最近の研究によると、その発生は、能力レベルよりも、ウマとのインタラクションの頻度と量により依存し、ウマを扱う個人の訓練や、特定の研究に対する強い必要性が示唆されている。本研究では、ヒトとウマの関係に関する、現在の科学的知識を再検討する。ここでは、familiarなウマとunfamiliarなウマとの、短期的で偶発的なやりとりと、長期的な絆を区別する。 ウマとヒトの関係の重要な側面は、強いポジティブな関係の形成と維持を試みたり改善することである。研究においては、管理条件の不足(繁用場所やエサ、社会的接触の可能性、訓練方法)はウマとヒトの関係性上の問題に繋がる可能性があるとしている。また、ウマとヒトの関係性、特に若齢個体での関係性を評価、改善するために異なる方法が用いられてきている。最近の研究では、よく知られている社会的モデルの使用が、社会的促進を通じて大きな助けになる可能性があることが示されている一方で、接触の時間やタイプは、全ての役割を果たすこと明らかになった。 ここでの、重要な理論的枠組みは、Hindeの一連のやりとり(パートナーは以前のものに基づいて、次のやりとりに期待する)から生じる絆としての関係と定義する。関係性が一連のやりとりに基づいて構築されていることを理解することは、重要なステップである。というのは、次のステップのためのステップとしてそれぞれの相互作用の「ポジティブ」あるいは「ネガティブ」な感情価に注意が払われていることを示唆しているからだ。この文脈では、ウマを訓練するだけでなく、日常の手順にある避けられないネガティブなものを相殺し、関係へのそのネガティブな影響を減らすために、学習ルールのよりよい知識が必要である。 さらに、どのようにウマによりよくあるいは安全に近づくのかを評価するための(例えば、位置、姿勢、注視などの研究)研究が必要であることは明らかである。例えば、アプローチのタイプやタイミングは、ポジティブな関係性を形成するのに役立つかもしれないし、ヒトの管理や世話が関係に及ぼす影響や、関係性にポジティブな影響を与えるために適用することができる。また、乗り手とウマのやりとりは、乗馬の事故を減らすために注意が必要なウマとヒトの関係性の側面もある。一方で、現状を急速に改善することができる適切な知識が容易に利用可能である。ウマからの、行動の合図への意識や注意を育てることは、やりとりをするときに専門家(professionals)の間での事故を減少させるのに役立つ。従って、科学者はウマの動物行動学の知識の要素だけでなく観察能力を育てることを助けることによって重要な役割を果たすべきである。(鎌谷)

開講日 | 2018年12月12日 14:45~ 場所 | E304